顧客資産残高で国内最大の証券会社、野村證券を率いる野村ホールディングス。 大阪の両替商から出発し、幾度もの不祥事でトップ交代を経験してきた。 それでも2008年、リーマン・ブラザーズの一部をわずか2ドルで買い取り、世界へ打って出た。
創業から現在へ — ストーリー
10年で、売上は約2.8倍
(手元に残った利益)
事業の構造 — 何で稼いでいるか
投資指標
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投資家目線のポイント
野村の業績は株式市場の売買代金や引き受け業務の件数に左右されやすく、相場が荒れると利益が振れやすい構造があります。四半期ごとの決算を、市況の動きと合わせて見る視点が参考になりそうです。
この会社は損失補填事件やインサイダー情報漏洩など、経営トップの辞任を伴う不祥事を何度も起こしてきました。新しいニュースに接したときは、どの部門で起きたことか、再発防止がどう説明されているかを見る視点が参考になりそうです。
「野村證券株式会社」に決まるまで
1925年、大阪の野村合名会社で発起人会が開かれました。新しい会社の名前には「野村ボンド・ハウス」や「株式会社野村證券部」といった案も挙がったといいます。
最終的に選ばれたのは「野村證券株式会社」でした。同じ年のうちに設立登記が完了し、翌年、社員89名で営業を始めています。本店は大阪に置かれ、東京・京都・名古屋・神戸に出張所を構えるところからのスタートでした。
NTTの上場を主幹事した年
戦後の野村證券は、投資信託や海外業務を軸に事業を広げていきました。1978年に社長となった田淵節也のもとでは国際部門が大きく伸び、世界有数の証券会社と評されるまでになります。
その勢いが頂点に達したのが1987年です。日本電信電話(NTT)の株式上場で主幹事を務め、同じ年にユーロ債の引受ランキングでも首位に立ちました。バブル景気の入り口だったこの時期、野村證券は日本の証券業界の中心にいました。
「損失補填」——279億円の代償
1991年、野村證券に激震が走りました。大口顧客への損失補填が発覚したのです。88年9月期から91年3月期までの補填額は合計27,914百万円、55件にのぼりました。
同時に、暴力団関係者だった石井隆匡が東京急行電鉄株を買い占める際、野村證券がその窓口になっていたことも明らかになります。会長の田淵節也は経団連副会長の職を解かれたうえで引責辞任、社長の田淵義久も職を退きました。田淵節也は国会の証人喚問も受けています。
総会屋への利益供与と、二度目の社長辞任
1995年、田淵節也は取締役として野村證券に復帰していました。ですが1997年、総会屋の小池隆一への利益供与が発覚します。
証券取引等監視委員会は野村證券と当時の常務取締役らを検察に告発しました。酒巻英雄社長が引責辞任し、田淵節也もこのとき、相談役を含むすべての役職から退いています。1991年の損失補填事件から数年で、野村證券は再びトップの辞任という形で不祥事の責任を取ることになりました。
持株会社への衣替えと、NYSE上場
2001年、野村證券は事業会社から金融持株会社体制に移行し、野村ホールディングス株式会社が誕生しました。
同じ年のうちに、野村ホールディングスとしてニューヨーク証券取引所に株式を上場します。国内の証券不祥事から10年、野村は海外の資本市場でも評価を得られる体制づくりに動いていました。
「2ドル」で買った欧州部門
2008年、米リーマン・ブラザーズが経営破綻しました。野村ホールディングスは倒産からわずか10日で、リーマンの資産の買収交渉をまとめています。
アジア太平洋部門には約2億2,500万ドル(約238億円)を払い、資産と雇用の両方を引き継ぎました。一方、欧州・中東部門で野村が支払った金額は、株式・投資部門の従業員約2,500人の雇用だけを引き継ぐ条件で、わずか2ドル。資産や顧客口座の査定(デューデリジェンス)を省くことで、破格の速さで決着させた買収でした。
「増資インサイダー」、二人のトップの退任
2012年、野村證券の機関投資家営業部署が、公募増資の情報を公表前に顧客へ伝えていたことが発覚しました。金融庁は野村證券に対し、金融商品取引法に基づく業務改善命令を出しています。
内部管理部門が「法人関係情報の管理態勢は適正で問題は生じ得ない」と過信し、他部署からの情報の恒常的なやり取りを見過ごしていたことが、金融庁の処分内容から分かっています。親会社の野村ホールディングスでは渡部賢一グループCEOが引責辞任しました。
19年ぶりの最高益、不祥事の先で
インサイダー事件の後も、野村ホールディングスは個人向け・投資運用・法人向けの各部門を立て直していきます。2025年に入り、その成果が数字に表れました。
2025年3月期の純利益は3,407億円で、前の期の2.1倍。2006年3月期以来、19年ぶりに過去最高を更新しました。個人向け・投資運用・法人向けの3部門すべてが増益となっています。不祥事のたびにトップが替わってきたこの会社にとって、久しぶりに明るいニュースでした。
