シリコンウェーハ専業のSUMCOは、住友と三菱の技術が結晶して生まれました。 リーマン危機で倒産寸前まで転落し、投資規律を武器にAI需要へ攻めています。

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創業から現在へ — ストーリー

1999 — 2002
住友と三菱、ライバル同士がシリコン事業を統合
1999年、住友金属工業と三菱マテリアル、その子会社の三菱マテリアルシリコンが共同出資し、300mmシリコンウェーハの開発・製造を目的に「株式会社シリコンユナイテッドマニュファクチャリング」を設立しました。2002年には住友金属工業からシリコン事業の譲渡を受けて三菱マテリアルシリコンと合併し、商号を三菱住友シリコンに変更します。公正取引委員会の審査では、統合後の販売シェアは約30%で国内首位になると見積もられましたが、競合や海外メーカーの存在を理由に問題なしと判断されました。
2005 — 2006
SUMCOへ商号変更、上場とコマツ電子金属の子会社化
2005年、商号を株式会社SUMCOに変更し、同じ年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。翌2006年には公開買付けでコマツ電子金属を子会社化し、のちにSUMCO TECHXIVという社名に変わっています。住友・三菱・コマツという3系統のシリコン技術が、こうして一つの会社に集約されました。
2008 — 2012
リーマン・ショックが招いた「倒産寸前」
2000年代半ばの好況期、SUMCOは競合に後れを取ることを恐れて設備投資を積極化しました。ところが2008年のリーマン・ショックで需要が消え、残ったのは過剰設備と大幅な赤字でした。2012年1月期まで3期連続の最終赤字が確実な情勢となり、当時社長に就いた橋本眞幸氏はこの状態を「倒産寸前」と振り返っています。
2012
太陽電池事業から撤退、1300人の人員削減
2012年、SUMCOは事業再生計画を発表し、582億円の特別損失を計上しました。太陽電池用シリコンウエハー事業から撤退して伊万里のソーラー工場を閉鎖し、連結社員の15%にあたる1300人を削減しています。三菱マテリアル副社長から転じたばかりの橋本新社長が、この再建の陣頭に立ちました。
2021 — 2022
半導体不足でも動かなかった増産投資
2021年、TSMCなど半導体メーカー各社から早期の増産要請が相次ぎましたが、SUMCOはすぐには動きませんでした。値上げが確定するまで工場新設に動かないという投資規律のもとで検討を重ね、同年秋にようやく国内で約2,287億円、台湾で約1,150億円の増産投資を発表しています。
2023 — 2026
佐賀の新工場計画とAI需要への転換
2023年、SUMCOは佐賀県吉野ケ里町などに総額2,250億円を投じる新工場計画を発表しました。ところがスマートフォンやパソコン向け需要の伸びが止まる一方、AIデータセンター向けの高度なウェーハ需要が急拡大したため、2026年に新工場建設を当面延期し、既存工場の設備高度化へ振り替えています。同じ年、副社長の龍田次郎氏が新社長に昇格し、阿波俊弘社長は退任して常勤顧問に就きました。2012年に社長に就任した橋本眞幸氏も、会長から相談役に退いています。
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事業の構造 — 何で稼いでいるか

柱 01
シリコンウェーハ専業(半導体の土台)
半導体チップの基板になるシリコンウェーハを製造・販売する専業メーカーです。ポリッシュト・ウェーハを基本に、エピタキシャル・ウェーハやアニール・ウェーハなど用途に応じた製品をそろえ、スマートフォンやパソコン、家電、車などあらゆる電子機器の心臓部を下支えしています。
柱 02
最先端ロジック向けウェーハ
最先端の高性能ロジック半導体向けウェーハでは業界トップのシェアを持つとしており、TSMCからは優秀生産支援賞を12年連続17回目受賞するなど、Samsung Electronicsやキオクシアといった半導体大手からも継続して表彰を受けています。
柱 03
国内外の生産拠点
製造拠点は佐賀・伊万里や長崎など九州を中心に、米沢、千歳、秋田にも広がり、台湾の工場も加えて世界8カ国30拠点で事業を展開しています。営業拠点は東京・大阪・福岡です。
柱 04
信越化学と並ぶ日本の2社
シリコンウェーハ業界は信越化学工業とSUMCOという日本企業2社が「2強」と並び称される構造で、ほとんどの半導体メーカーと取引関係を持っています。ただし業績や株価の値動きは両社で異なる展開を見せることもあります。
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投資指標

株価
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東証プライム
前日比
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配当利回り
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年間予想
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株価収益率
PBR
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株価純資産倍率
時価総額
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円換算
52週高値
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過去1年
52週安値
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過去1年

取得中…

投資家の博士

投資家目線のポイント

SUMCOの業績はシリコンサイクルと呼ばれる半導体の好不況の波に左右されやすく、新工場の稼働タイミングと需要の波がずれると一時的に利益を圧迫する構造があります。2025年12月期の最終赤字は、佐賀の新工場が生んだ減価償却費の増加が主因でした。

経営陣は過去の「倒産寸前」の経験から、需要増の局面でもすぐには工場新設に動かない投資規律を重視してきました。新工場計画の延期や縮小のニュースは、後ろ向きの撤退ではなく、需要動向を見極める経営判断として読む視点が参考になりそうです。

「ライバル同士」の統合——300mmウェーハに賭けた住友と三菱

1990年代末、半導体の主流は200mmウェーハから300mmウェーハへ移ろうとしていました。単独では巨額の開発投資を賄いきれないという事情から、住友金属工業と三菱マテリアル、その子会社の三菱マテリアルシリコンは手を組む決断をします。

1999年、3社は共同出資で「株式会社シリコンユナイテッドマニュファクチャリング」を設立し、300mmウェーハの開発・製造に乗り出しました。2002年には住友金属工業のシリコン事業を譲り受けて三菱マテリアルシリコンと合併し、商号を三菱住友シリコンに変更します。公正取引委員会の審査では、統合後の販売シェアが約30%で国内首位になると見積もられましたが、10%超のシェアを持つ競合や海外メーカーの存在を理由に、競争を制限するものではないと判断されました。

社名を三度変えて——上場、そして3系統の技術が一つになった日

三菱住友シリコンという社名は、まだ最後の形ではありませんでした。2005年、株式会社SUMCOに商号を改め、同じ年に東京証券取引所市場第一部へ上場しています。

翌2006年には、コマツグループのシリコンウェーハメーカーだったコマツ電子金属を公開買付けで子会社化しました。のちにSUMCO TECHXIVと社名を変えたこの会社が加わったことで、住友・三菱・コマツという3系統の技術が一つの会社にまとまりました。

「倒産寸前」——リーマン・ショックが暴いた過剰投資のツケ

2000年代半ば、半導体市場は好況にわいていました。SUMCOは競合に後れを取ることを恐れ、設備投資を積極化していきます。ところが2008年のリーマン・ショックで半導体需要は消え、残ったのは過剰設備と大幅な赤字でした。

2012年1月期まで3期連続の最終赤字が確実な情勢のなか、三菱マテリアル副社長だった橋本眞幸氏がSUMCO社長に転じます。橋本氏は自ら「火中の栗を拾う覚悟」で引き受けたと語り、当時の状況を後年「倒産寸前」という言葉で振り返っています。

582億円の特別損失——太陽電池撤退と1300人の人員削減

2012年、SUMCOは事業再生計画を発表しました。太陽電池用シリコンウエハー事業は「環境改善がみられない」として、伊万里のソーラー工場を閉鎖、連結子会社親会社の決算に売上・利益をまとめて計上する子会社。親会社が過半数の議決権を持つ会社などが対象。のSUMCOソーラーを解散します。

再生計画に伴う特別損失は582億円にのぼり、繰延税金資産の取り崩しも重なって、2012年1月期の最終損失は850億円に達しました。連結社員の15%にあたる1300人の人員削減も実施し、生産拠点を伊万里・台湾・インドネシアなどに集約しています。この計画がまとまった直後、三菱マテリアル副社長だった橋本眞幸氏が新社長に就任し、痛みを伴う再編の実務を引き継ぎました。

半導体不足でも動かなかった——値上げ待ちの投資規律

2021年、TSMCをはじめとする半導体メーカー各社が、ウエハー不足を理由にSUMCOへ早期の増産を繰り返し求めました。世界的な半導体不足が深刻化するなかでも、SUMCOはすぐには動きませんでした。

橋本氏はリーマン・ショック後の過剰設備と大赤字を忘れておらず、値上げが実現するまで新しい工場への投資には動かないという方針を貫きます。慎重な検討を重ねた末、2021年秋にようやく国内で約2,287億円、台湾で約1,150億円の増産投資に踏み切りました。

2,015億円の賭け——AI時代へ、佐賀への大型投資

半導体不足への慎重姿勢から一転、SUMCOは佐賀県伊万里市への大型投資に動きます。2022年、関連施設を含め計2,015億円を投じる新工場の立地協定を佐賀県・伊万里市と締結し、300mmウエハーの増産体制を築きました。台湾でも約1,150億円を投じて新工場を建設し、日台で増産体制を整えています。

急速に増える半導体需要への対応が投資の理由でした。豊富な工業用水が使える伊万里市が選ばれ、2023年の稼働開始、2025年のフル生産体制を目指す計画でした。

AI需要への転換——吉野ケ里延期と14年ぶりの最終赤字

2023年、SUMCOは佐賀県吉野ケ里町などに総額2,250億円を投じる新工場計画を発表しました。ところがスマートフォンやパソコン向けの需要の伸びが止まる一方、AIデータセンター向けの高度なウェーハ需要が急拡大します。2026年、SUMCOは吉野ケ里の新設をいったん延期し、既存工場の設備高度化に振り替える判断をしました。

同じ年、副社長の龍田次郎氏が新社長に昇格し、阿波俊弘社長は退任して常勤顧問に就きました。2012年に社長に就任した橋本眞幸氏も、会長から相談役に退いています。佐賀の新工場が生んだ減価償却費の増加が響き、2025年12月期の最終損益は117億円の赤字となり、決算期変更前の2012年1月期以来およそ14年ぶりの赤字となっています。