イーバンク銀行としてスタートしたこの会社は、サブプライム危機で経営難に陥り、楽天に救われました。 社名を楽天銀行に変え、いまは楽天カードと楽天証券を束ねる、グループ金融の中核になろうとしています。
創業から現在へ — ストーリー
事業の構造 — 何で稼いでいるか
投資指標
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投資家目線のポイント
2026年から株式移転で楽天カードと楽天証券ホールディングスが子会社になる予定のため、今後は銀行単体でなくグループ全体の資金の流れを見る視点が必要になりそうです。カード債権の流動化など、グループ内の取引規模も大きく、連結決算の構造が複雑になる可能性があります。
預金や口座数の伸びは、楽天ポイントや楽天カードなど他のグループサービスとの連携に支えられてきた面があります。銀行単体の商品力だけでなく、楽天グループ全体の会員基盤の動向が、この先の成長ペースに影響しそうです。
「なんとか100億円を集めることに成功しました」——開業前夜の資本集め
イーバンク銀行の共同創業者の一人、若山健彦氏は、日本長期信用銀行(長銀)時代の先輩だった松尾泰一氏に声をかけられ、銀行の立ち上げに加わりました。「松尾さんが社長、私が副社長となり…河野貴輝さんが取締役という布陣でスタート」したといい、若山氏が32歳のときのことでした。
銀行免許を取得するには相応の資本金が必要でしたが、免許が下りるかどうかも分からない段階で出資を募るのは簡単ではありませんでした。若山氏は「金融庁からは資本は集まるのかと問われる一方で、出資者からは、本当に銀行免許が下りるのかと言われる」板挟みの状況を、金融庁を説得することで乗り越え、「なんとか100億円を集めることに成功しました」と語っています。
「破格の40億円」で銀行システムを作る
資本を集めるだけでなく、銀行の心臓部にあたる勘定系システムをどう作るかも大きな課題でした。イーバンク銀行が掲げた最大のコンセプトは、「約40億円という破格の値段で銀行システムを構築する」というものでした。当時、他行からは「できるはずがない」と言われていたといいます。
最終的には、日立製作所の金融システム部門の協力を得てシステム構築を実現し、開業にこぎ着けました。実店舗を持たないぶん、コストを抑えたシステムこそが、この銀行の事業モデルの土台になりました。
234億円の赤字——サブプライム危機からの生還
2007年度、イーバンク銀行は連結で234億3百万円、単体で235億91百万円の当期純損失を計上しました。証券化商品などへの投資に伴う評価損が主な要因になったとされ、経常損益も225億35百万円の赤字に沈みました。実店舗を持たないネット銀行が、サブプライム関連の損失計上が続いた形でした。
この状況を受け、2008年に楽天株式会社との資本・業務提携が結ばれます。楽天は2009年、優先株式を普通株式に転換し、議決権保有比率48.69%の主要株主としてイーバンク銀行を連結子会社化しました。大幅な赤字を計上していたイーバンク銀行への資本参加という形での支援でした。
資本参加を受けたイーバンク銀行は、2010年に社名を「楽天銀行」に変更し、その後は預金残高を伸ばし続けました。2013年には単体預金残高が1兆円を突破し、2023年には東証プライム東京証券取引所の上場区分の一つ。2022年の市場再編で、上場企業はプライム・スタンダード・グロースの3区分に分けられた(それ以前は市場第一部・第二部やマザーズと呼ばれていた)。への上場も果たしています。234億円の赤字を出した銀行は、10年余りをかけて上場企業として立ち直りました。
親会社が二度変わった5年——楽天カードから楽天グループへ
楽天銀行は、グループ内での立ち位置が何度か変わっています。2019年のグループ内組織再編で、楽天銀行は楽天カードの傘下に位置づけられました。フィンテック関連の子会社を整理し、責任の所在を明確にする狙いがあったとされています。
ところが2022年、楽天カードが現物配当を行う形で、楽天銀行の親会社は楽天カードから楽天グループへと変わりました。背景には、「より自律的な経営視点による成長戦略の遂行」を掲げ、株式上場の準備を進めていた事情があったとされています。楽天カードという枠を離れることで、グループのフィンテックエコシステムの外側でも顧客を獲得しやすくする狙いがあったといいます。
初値33%高、717億円——上場に懸けた楽天グループの思惑
2023年、楽天銀行は東京証券取引所プライム市場に上場しました。初値は1,856円と、公開価格1,400円を33%上回りました。
この上場の背景には、親会社である楽天グループの事情もありました。当時、携帯電話事業の不振が続いていた楽天グループは、楽天銀行株の一部を売り出すことで、717億円の資金を確保したと報じられています。楽天銀行は「お客さまとともに日々進化し、これからもFintechのリーディングカンパニーとして…貢献していく」とコメントしています。
4時間半、取引が止まった日
2024年、楽天銀行で取引ができなくなるシステム障害が発生しました。発生は午前9時30分ごろ、解消は午後1時54分ごろで、約4時間半にわたって影響が続きました。楽天銀行は「お客さまにはご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます」とコメントしています。
障害の原因は公表されておらず、楽天銀行・報道のいずれにも詳しい説明は見当たりません。実店舗を持たず、システムに事業のすべてを依存するネット銀行にとって、こうした障害は今も向き合い続けている課題です。
楽天カードと楽天証券を束ねる——2026年、主従が入れ替わる日
2026年、楽天グループは、株式移転によって楽天カードと楽天証券ホールディングスを楽天銀行の子会社にする再編を発表しました。効力発生は2026年内が予定されています。
かつて楽天銀行自身が楽天カードの傘下に置かれていた時期があったことを思えば、この再編は主従の入れ替わりとも言えます。銀行免許を持つ楽天銀行が、フィンテック事業全体の株式移転の受け皿になることで、グループの金融事業を統括する立場に近づこうとしています。
