イーバンク銀行としてスタートし、サブプライム危機で行き詰まった末、楽天に救われた。 社名を楽天銀行に変え、楽天カードと楽天証券を束ねるグループ金融の中核になった。

01

創業から現在へ — ストーリー

2000
日本電子決済企画として設立
楽天銀行の前身、日本電子決済企画株式会社は資本金4億円で設立された。翌年に商号をイーバンク銀行に変更し、銀行免許を取得してネット専業銀行として開業した。
2001
モバイルバンキングとデビットカードでサービスを広げる
開業後は、モバイルバンキングとキャッシュカードを整備し、VISAデビット機能付きカードも発行した。
2007
サブプライム危機で経営難に陥る
イーバンク銀行は、証券化商品への投資に伴う評価損などで大幅な赤字に陥った。楽天が資本・業務提携を経て出資比率を引き上げ、主要株主として連結子会社親会社の決算に売上・利益をまとめて計上する子会社。親会社が過半数の議決権を持つ会社などが対象。化した。
2009
社名を「楽天銀行」に変更
楽天はイーバンク銀行にTOB買収したい会社の株式を、価格・期間・株数をあらかじめ公表して市場外で買い集める手法。を実施し、持ち株比率を88.57%に引き上げた。同年、商号を「楽天銀行」に変更した。
2013
預金1兆円突破
楽天銀行の単体預金残高が1兆円を突破した。
2023
東証プライムに上場
楽天銀行は東京証券取引所プライム市場に上場した。初値新規上場した株式が取引所で最初に成立する取引価格。は公開価格を上回った。
2024
システム障害が発生
楽天銀行で約4時間半にわたり取引ができなくなるシステム障害が発生した。
02

事業の構造 — 何で稼いでいるか

柱 01
決済とカード
振込やデビット/クレジット機能付きカードなど、個人と法人の日常決済を支えている。
柱 02
預金と与信
円預金・外貨預金に加え、貸出金などの与信業務を行っている。
柱 03
グループ内連携
楽天証券との預金連携や、楽天カード債権の流動化など、グループ内の資金をつなぐ。
柱 04
フィンテック統括
2026年、楽天カードと楽天証券HDが子会社になり、金融事業を統括する。
03

投資指標

株価
——
東証プライム
前日比
——
——
配当利回り
——
年間予想
PER
——
株価収益率
PBR
——
株価純資産倍率
時価総額
——
円換算
52週高値
——
過去1年
52週安値
——
過去1年

取得中…

100億円を集めた——開業前夜、金融庁との攻防

イーバンク銀行の共同創業者の一人、若山健彦氏は、日本長期信用銀行(長銀)時代の先輩だった松尾泰一氏に声をかけられ、銀行の立ち上げに加わりました。「松尾さんが社長、私が副社長となり…河野貴輝さんが取締役という布陣でスタート」したといい、若山氏が32歳のときのことでした。

銀行免許を取得するには相応の資本金が必要でしたが、免許が下りるかどうかも分からない段階で出資を募るのは簡単ではありませんでした。若山氏は「金融庁からは資本は集まるのかと問われる一方で、出資者からは、本当に銀行免許が下りるのかと言われる」板挟みの状況を、金融庁を説得することで乗り越え、「なんとか100億円を集めることに成功しました」と語っています。

「破格の40億円」——銀行システムを内製化した

資本を集めるだけでなく、銀行の心臓部にあたる勘定系システムをどう作るかも大きな課題でした。副社長だった若山健彦氏は、「約40億円という破格の値段で銀行システムを構築する」ことを最大のコンセプトに掲げました。当時、他行からは「できるはずがない」と言われていたといいます。

最終的には、日立製作所の金融システム部門の協力を得てシステム構築を実現し、開業にこぎ着けました。若山氏は「システム構築の最後のところは日立の金融システム部門の方たちに尽力していただいて、なんとか開業に至りました」と振り返っています。実店舗を持たないぶん、コストを抑えたシステムこそが、この銀行の事業モデルの土台になりました。

234億円の赤字——資本注入で生き延びた

2007年度、イーバンク銀行は証券化関連の投資で大きな評価損を抱え、連結で234億円あまりの当期純損失を計上しました。実店舗を持たないネット銀行が、世界的な金融危機の余波をまともに受けた年でした。

この危機をきっかけに、楽天株式会社が救いの手を差し伸べます。出資比率を段階的に引き上げ、最終的には過半を握る主要株主としてイーバンク銀行を傘下に収めました。大幅な赤字に沈んだ銀行への、資本参加という形の支援でした。

資本参加を受けたイーバンク銀行は、社名を「楽天銀行」に変え、その後は預金残高を伸ばし続けました。赤字から十数年をかけて、上場企業として立ち直りました。

親会社が二度変わった——楽天カードから楽天グループへ

楽天銀行は、グループ内での立ち位置が何度か変わっています。2019年のグループ内組織再編で、楽天銀行は楽天カードの傘下に位置づけられました。フィンテック関連の子会社を整理し、責任の所在を明確にする狙いがあったとされています。

ところが2022年、楽天カードが現物配当を行う形で、楽天銀行の親会社は楽天カードから楽天グループへと変わりました。背景には、グループ内よりも独立した経営判断で成長戦略を描きたいという事情があったとされています。楽天カードという枠を離れることで、グループのフィンテックエコシステムの外側でも顧客を獲得しやすくする狙いがあったといいます。

初値33%高——717億円に懸けた楽天の上場戦略

楽天銀行が東証プライム東京証券取引所の上場区分の一つ。2022年の市場再編で、上場企業はプライム・スタンダード・グロースの3区分に分けられた(それ以前は市場第一部・第二部やマザーズと呼ばれていた)。市場に足を踏み入れたのは2023年のことでした。取引開始直後につけた初値は、公開価格を33%も上回る値がつきました。

この上場には、親会社・楽天グループ側の事情も透けて見えます。当時、携帯電話事業の不振で資金繰りに苦しんでいた楽天グループは、保有する楽天銀行株を一部売り出し、717億円を手にしたと報じられました。楽天銀行は「お客さまとともに日々進化し、これからもFintechのリーディングカンパニーとして…貢献していく」とコメントしています。

4時間半——取引が止まった原因は不明のまま

2024年、楽天銀行で取引ができなくなるシステム障害が発生しました。発生は午前9時30分ごろ、解消は午後1時54分ごろで、約4時間半にわたって影響が続きました。楽天銀行は「お客さまにはご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます」とコメントしています。

障害の原因は公表されておらず、楽天銀行・報道のいずれにも詳しい説明は見当たりません。実店舗を持たず、システムに事業のすべてを依存するネット銀行にとって、こうした障害は今も向き合い続けている課題です。

主従交代——楽天カードと楽天証券を傘下に収めた

2026年、楽天グループは、株式移転で楽天カードと楽天証券ホールディングスが楽天銀行の傘下に入る再編を発表しました。効力発生は年内の予定です。

かつて楽天銀行自身が楽天カードの傘下に置かれていた時期があったことを思えば、この再編は主従の入れ替わりとも言えます。銀行免許を持つ楽天銀行が、フィンテック事業全体の株式移転の受け皿になることで、グループの金融事業を統括する立場に近づこうとしています。