CD通販から始まった会社が、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を作った。 全身採寸のスーツも、ブランド離れも経験し、創業者は社長の座を退いた。 いまはヤフー傘下で、海外に活路を求めている。
創業から現在へ — ストーリー
事業の構造 — 何で稼いでいるか
投資指標
取得中…
投資家目線のポイント
ZOZOTOWNの収益は出店ブランドから受け取る手数料が中心のため、大手ブランドの出店条件への不満や離脱は業績に直結しやすい構造です。過去に値引き施策をめぐってブランドが離れた例があり、出店ブランドとの関係維持が業績を左右します。
海外展開は英国企業の買収から始まったばかりで、国内のZOZOTOWN事業への依存は依然大きい状態です。海外事業やコスメなど新しい柱がどこまで育つかが、今後の成長の分かれ目になりそうです。
300万円——22歳の前澤友作が始めたCD通信販売
バンド「Switch Style」で活動していた前澤友作は、カナダ留学から戻った後、輸入レコードとCDを紹介する自作カタログを音楽雑誌に載せ、実家の電話とファックスで注文を受け付けていました。1998年、出資金300万円で有限会社スタート・トゥデイを千葉県習志野市に設立します。
月商はおよそ500万円だったといいます。2001年、前澤はバンド活動に区切りをつけ、経営に専念する道を選びました。趣味の延長で始めた副業が、のちに大きなファッション通販事業の出発点になっています。
17ブランドを一つに——「ZOZOTOWN」が生まれた日
2000年、前澤はアパレルEC「EPROZE」を立ち上げ、インターネット通販へと軸足を移していきました。2004年、それまで個別に運営していた既存17ブランドを一つのドメインに統合し、「ZOZOTOWN」を開設します。
ブランドごとのサイトを閉じ、編集権を運営側が握る「雑誌型」の売り場に作り替える判断でした。2006年には物流拠点「ZOZOBASE」を稼働させ、撮影・採寸・在庫管理を自社で内製化し、最短3時間での出荷を実現しています。
自己資本比率11.8%——借りずに勝つ、という賭け
スタート・トゥデイは創業以来、ベンチャーキャピタルからの出資を受けず、借入と自己資金で事業を拡大してきました。2006年時点の自己資本比率総資産のうち、返済不要の自己資本が占める割合を示す指標。は11.8%という低い水準にとどまっていたとされます。
外部資本に頼らない分、経営の自由度と意思決定の速さを保つことができました。その後、ZOZOTOWNの受託販売手数料は上昇していきます。
受託販売手数料、18%から30%へ——ZOZOTOWNの稼ぐ仕組み
2005年、大手セレクトショップのユナイテッドアローズがZOZOTOWNに出店したことをきっかけに、出店ブランドから受け取る受託販売手数料が上昇していきました。2005年度に18%だった手数料水準は、2011年度には30%に達したとされています。
自社在庫を持たずにブランドを預かって売る「受託販売」は、この手数料収入を軸に、ZOZOTOWNの収益基盤を支える仕組みになりました。
1,000万着のスーツ——「ZOZOSUIT」に見えた勝算と誤算
2017年、ZOZOは全身を採寸できるボディースーツ「ZOZOSUIT」を発表しました。専用アプリで撮影するだけで体形を計測できる仕組みで、世界各地で無料配布され、年間の配布枚数は1,000万着に達したとされています。
採寸データをもとにしたプライベートブランド「ZOZO」のビジネススーツは、売上目標15億円に対し納品実績は5億4,000万円にとどまりました。プライベートブランド事業全体では125億円の赤字を計上し、採寸を前提にした販売方式は縮小に追い込まれます。
その後、ZOZOは海外向けの計測サービスも新たに展開しています。ZOZOSUITとの技術的なつながりの詳細は明らかにされていません。
常時10%引きの代償——「ZOZOARIGATO」が招いたブランド離れ
2018年末、ZOZOは有料会員が常時10%引きで購入できるサービス「ZOZOARIGATO」を始めました。ですが、セール時期以外の値引きを避けたい老舗ブランドや高級ブランドから反発を招き、オンワードホールディングスなど値引き施策や手数料水準への不満を理由に出品を取りやめるブランドが相次ぎました。
撤退したブランドは全体の3.3%にあたる42ブランドにとどまったとされますが、ZOZOはこのサービスを開始から数か月で終了しています。急拡大を支えてきた「安売りに見えない売り場」という前提が、値引き施策一つで揺らいだ出来事でした。
前澤友作、社長を退く——ヤフー傘下という選択
2019年、ヤフーはZOZO株式の最大50.1%を取得すると発表しました。筆頭株主として36.76%を保有していた前澤友作は、その大半にあたる30.37%を売却に応じています。同じ日、前澤は代表取締役社長を退任し、社内出身の澤田宏太郎が後任に就きました。
前澤は「最適な後継者に経営を託したい」との意向を示したと報じられています。ヤフーは自社のオークション・ショッピング事業とZOZOTOWNの若年層ユーザーを組み合わせる狙いを示し、その秋に買収を完了しました。
後払いという賭け——ふくらみ続けた未回収金
2016年、ZOZOは商品受け取り後に代金を支払う「ツケ払い」を始めました。決済を代行したGMOペイメントサービスの親会社GMOペイメントゲートウェイでは、サービス開始から1年で貸倒引当金が3億円台から23億円台へ、未収入金が17億円台から146億円台へ膨らんだと報じられています。
支払い能力を確認しないまま利用できる仕組みは、若い利用者を取り込む一方、滞納リスクを一手に引き受ける決済代行会社の財務を圧迫しました。後払いという便利さの裏側に、回収という重い課題があったことを示す出来事です。
国内飽和からの一手——「Lyst」買収と、過去最高益の裏側
2023年度、ZOZOTOWN事業を含む商品取扱高と営業利益はともに過去最高を更新しました。ですが、会員数が伸びる一方で会員一人あたりの購入額は伸び悩んでおり、国内市場の伸びしろには限りが見え始めていました。
2025年、ZOZOは英国のファッションEC「Lyst」を約231億円で買収しました。Lystは在庫を持たずにブランドと顧客を仲介する「アフィリエイト型」のサービスで、年間220万人が利用しています。ZOZOTOWNというひとつの街から、いよいよ海外という次の街へ足を踏み出した買収でした。
