レコードの通信販売から始まった会社が、複数のブランドを束ねたオンラインの売り場「ZOZOTOWN」を作り上げた。 全身採寸スーツの誤算も、値引きをめぐるブランド離れも経験し、創業者は社長の座を手放した。 会社はヤフーの傘下に入り、活路を海外へと広げた。

01

創業から現在へ — ストーリー

1998
前澤友作が輸入CDの通信販売を始める
前澤友作が、輸入CD・レコードの通信販売を手がける有限会社スタート・トゥデイを設立した。ごく小さな商いから始まった。
2000
アパレルEC「EPROZE」でネット通販に踏み出す
前澤はアパレルEC「EPROZE」でネット通販に転じた。その4年後、個別に運営していた複数のブランドサイトを閉じ、一つに束ねた「ZOZOTOWN」を開設した。
2007
スタートトゥデイが東証マザーズに上場する
スタートトゥデイが東京証券取引所マザーズ東京証券取引所の上場区分の一つ。2022年の市場再編で、上場企業はプライム・スタンダード・グロースの3区分に分けられた(それ以前は市場第一部・第二部やマザーズと呼ばれていた)。に上場した。同社にとって大きな節目で、数年後には市場第一部へ移った。
2016
代金後払いサービス「ツケ払い」を始める
代金後払いサービス「ツケ払い」を始めた。その翌年に採寸スーツ「ZOZOSUIT」を無料配布し、さらに翌年、創立20周年にあわせて社名を「ZOZO」に改めた。
2019
前澤友作が社長を退任する
ヤフーがZOZO株式の最大50.1%を取得すると発表。同じ日、前澤友作は社長を退き、澤田宏太郎が後任に就いた。その後、ヤフーの連結子会社親会社の決算に売上・利益をまとめて計上する子会社。親会社が過半数の議決権を持つ会社などが対象。となった。
2021
コスメと海外に新たな柱を求める
コスメ専門モール「ZOZOCOSME」を開き、アパレル以外の柱を育て始めた。その後は業績を伸ばし、英国のEC「Lyst」買収で海外へ踏み出した。
02

事業の構造 — 何で稼いでいるか

柱 01
ZOZOTOWN
個人向けの売り場に多くのブランドが出店し、受託販売の手数料が主な収益源です。
柱 02
広告事業
ZOZOTOWNや「WEAR」の利用者基盤を生かし、ブランドに広告枠を売ります。
柱 03
ヤフー内の受託販売
ヤフーのショッピングやオークションでも、受託販売と中古販売の手数料を得ています。
柱 04
海外・BtoB事業
英国「Lyst」による海外EC展開と、他社のEC運営を支える受託事業です。
03

投資指標

株価
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東証プライム
前日比
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配当利回り
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年間予想
PER
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株価収益率
PBR
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株価純資産倍率
時価総額
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円換算
52週高値
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過去1年
52週安値
——
過去1年

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バンド活動のかたわら——輸入盤の通販から始まった

高校を卒業した前澤友作は、バンドで音楽活動を続けながら、輸入レコードとCDの通信販売を始めました。1998年、その商いを法人化し、有限会社スタート・トゥデイを設立します。

好きな音楽を売ることから始めた創業者の副業が、のちに大きなファッション通販事業の出発点になっています。

個別サイトを閉じた——一つの売り場に統一して並べる

2000年に前澤が立ち上げたアパレルEC「EPROZE」は、複数ブランドをまとめて扱う実験の場でした。その経験をもとに、個別に運営していた複数のブランドサイトを閉じ、一つのドメインに統合したのが「ZOZOTOWN」です。

個々のブランドの売り場を一つのサイトに集め、統一した見せ方で並べたことが、ほかのECモールとの違いになりました。出店ブランドの商品は、2006年に稼働した物流拠点「ZOZOBASE」など自社の拠点で受託在庫として預かり、在庫管理までを自社で担っています。

大手セレクトショップの出店——手数料で稼ぐ形が生まれた

大手セレクトショップの出店が続くなかで、ZOZOTOWNの主な収益は出店ブランドから受け取る受託販売手数料になりました。各ブランドはテナント形式で出店し、ZOZOは商品を自社の物流拠点に受託在庫として預かって販売します。在庫リスクをZOZOが負わない代わりに、売上高として計上されるのは商品の代金ではなく手数料の分だけです。

自社で在庫を持たず、ブランドから商品を預かって売るこのしくみでは、出店ブランドとの関係がそのまま収益力を左右します。のちにZOZOは、値引き施策をきっかけにしたブランドの離脱や、プライベートブランドの不振という揺さぶりを受けることになります。

世界に配った1,000万着——「ZOZOSUIT」の誤算

2017年、前澤友作が率いるスタートトゥデイ(のちのZOZO)は全身を採寸できるボディースーツ「ZOZOSUIT」を発表しました。専用アプリで撮影するだけで体形を測れる仕組みで、世界各地に無料で配られ、その数は1,000万着に達したとされています。

ところが、採寸データをもとにしたプライベートブランドのスーツは売上目標に遠く届かず、プライベートブランド事業全体で125億円の赤字を計上しました。採寸を前提にした販売方式は、その後縮小に追い込まれます。

ZOZOは海外向けの計測サービスも新たに展開していますが、ZOZOSUITとの技術的なつながりの詳細は明らかにされていません。

常時10%引きの代償——ブランドが去っていった

2018年末、ZOZOは有料会員が常時10%引きで購入できるサービス「ZOZOARIGATO」を始めました。ですが、セール時期以外の値引きを避けたい老舗ブランドや高級ブランドから反発を招き、オンワードホールディングスなど値引き施策や手数料水準への不満を理由に出品を取りやめるブランドが相次ぎました。

撤退したブランドは全体の3.3%にあたる42ブランドにとどまったとされますが、ZOZOはこのサービスを開始から数か月で終了しています。急拡大を支えてきた「安売りに見えない売り場」という前提が、値引き施策一つで揺らいだ出来事でした。

株の大半を手放した創業者——ヤフーが狙った若い客層

2019年、ヤフーはZOZO株式の最大50.1%を取得すると発表しました。筆頭株主として36.76%を保有していた前澤友作は、その保有株の大半を売却に応じています。同じ日、前澤は代表取締役社長を退任し、社内出身の澤田宏太郎が後任に就きました。

前澤は「最適な後継者に経営を託したい」との意向を示したと報じられています。ヤフーは自社のオークション・ショッピング事業とZOZOTOWNの若年層ユーザーを組み合わせる狙いを示し、その秋に買収を完了しました。

後払いという賭け——ふくらみ続けた未回収金

2016年、スタートトゥデイは商品受け取り後に代金を支払う「ツケ払い」を始めました。決済を代行したGMOペイメントサービスの親会社GMOペイメントゲートウェイでは、サービス開始から1年で未収入金が17億円台から146億円台へ膨らんだと報じられています。

支払い能力を確認しないまま利用できる仕組みは、若い利用者を取り込む一方、滞納リスクを一手に引き受ける決済代行会社の財務を圧迫しました。後払いという便利さの裏側に、回収という重い課題があったことを示す出来事です。

国内市場に天井が見えた——英「Lyst」買収で海外へ

2024年3月期は、営業利益が過去最高を更新しました。ですが、会員一人あたりの購買頻度の向上を課題に挙げており、国内市場の伸びしろには限りが見え始めていました。

2025年、ZOZOは英国のファッションEC「Lyst」を買収し、完全子会社としました。Lystは在庫を持たずにブランドと顧客を仲介する「アフィリエイト型」のサービスです。ZOZOTOWNというひとつの街から、いよいよ海外という次の街へ足を踏み出した買収でした。