腎臓病を機に介護の道へ進んだ苗代亮達は、パーキンソン病専門の介護施設「PDハウス」を生んだ。 全国展開でグロースからプライムへ駆け上がった直後、診療報酬の不正請求が発覚する。 いま、新体制のもとで信頼の立て直しが試されている。
創業から現在へ — ストーリー
9年で、売上は約11.2倍
事業の構造 — 何で稼いでいるか
投資指標
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投資家目線のポイント
サンウェルズは、東京証券取引所スタンダード市場への区分変更審査を受けています。審査の結果が出るまでは上場そのものに不確実性が残る局面です。今後の適時開示で、審査の進捗を確認する視点が参考になりそうです。
訪問看護や介護報酬は、サービス提供の実績に応じて請求する仕組みのため、記録と請求の正確さが常に問われる業界構造があります。同種の論点は他の介護・医療関連企業にも当てはまりうるため、業界全体の話として捉える視点も参考になりそうです。
腎臓病、大学中退、25歳からの再出発
苗代亮達は、1973年に石川県で生まれました。高校を中退したのち大検を経て大学に入学しますが、そのとたん腎臓病にかかり、長期入院を余儀なくされます。休学費用を工面できず、大学は中退することになりました。
25歳のとき、専門医の治療によって症状は大きく改善しました。専門医との出会いが人生を変える——この経験が、のちの介護事業の原点になります。周囲に迷惑をかけたくないという思いから、苗代は一人でできる仕事として起業を選びました。
バリアフリー工務店から、デイサービス運営会社へ
2001年、苗代は要介護認定を受けた高齢者の自宅に手すりなどを設置する、バリアフリー専門の工務店「株式会社アイテム」を設立しました。
2006年には、通所介護サービスの会社「株式会社ケア・コミュニケーションズ」を創立します。同じ年に最初の施設を開設し、その後、訪問介護やグループホームを手がける関連会社を次々に立ち上げました。2011年、これらの会社を合併して株式会社サンウェルズに商号変更しています。
「PDハウス」という名前に込めた意味
サンウェルズの施設には、パーキンソン病の入居者が30名ほどいました。苗代は、そのほとんどが施設に入ると症状が悪化することに疑問を持ちます。自分自身が専門医との出会いで回復した経験から、パーキンソン病にも専門特化した施設が必要だと考えたといいます。
こうして生まれた施設の名前が「PDハウス」です。Parkinson’s Disease Houseの頭文字から名付けられました。国内にパーキンソン病特化の介護施設がなかったことから、世界的にも意義のあるサービスになると考えたといいます。
世界になかった専門施設、専門医と作ったケアの中身
PDハウスの柱は、脳神経内科の専門医による訪問診療と、24時間体制の訪問看護です。理学療法士や作業療法士、言語聴覚士がパーキンソン病に特化したリハビリを行い、症状の進行に合わせたケアを提供します。
スタッフには社内資格「PDライセンス」の取得を求め、専門医監修の研修や大学病院との連携を通じて知識を深めています。全国の大学病院や専門医との連携は、いまも同社が強みとして掲げる仕組みです。
3年で駆け上がった上場ステージ
PDハウス白山の開設をきっかけに、サンウェルズは全国展開を加速させます。福岡県や北海道への進出を経て、2022年、東京証券取引所グロース市場に上場しました。
その後も新規開設のペースは緩まず、2024年にはプライム市場へ市場区分を変更しています。上場からわずか2年での昇格でした。ですが、この年、この会社は大きな転機を迎えることになります。
「そのような事実は一切ない」——否定から始まった不正請求問題
2024年、一部の報道機関が、サンウェルズの訪問看護を巡る診療報酬の不正請求疑惑を報じました。全国のPDハウスで、事実と異なる看護記録が作られているという内容でした。
サンウェルズは当初、「そのような事実は一切ない」と強く否定し、法的措置も検討する姿勢を見せました。ですが同じ年、外部の専門家からなる特別調査委員会の設置を発表し、疑惑の全容解明に乗り出すことになります。
28億4700万円、特別調査委員会が突き止めた不正の手口
2025年、特別調査委員会は調査報告書をまとめました。認定された不正請求の総額は、約28億4700万円。ほぼ全てのホームで、同様の不正が確認されたといいます。
手口は主に二つありました。数分で終わった訪問を、約30分間の訪問だったと記録するもの。そして、実際には同行していない、あるいは数秒しか滞在していない同行者について、複数名看護加算に値する訪問があったかのように申告し、加算を請求するものです。サンウェルズはこの年の業績予想を、大幅な赤字に下方修正しました。
宣誓書違反と監理銘柄、東証が突きつけた猶予期限
東京証券取引所は、プライム市場への市場変更時にサンウェルズが提出した宣誓書に違反があったと判断しました。2025年、同社は再審査の猶予期間に入り、上場契約違約金6,240万円を求められています。
サンウェルズは流通株式時価総額株価に発行済み株式数をかけた金額。企業の大きさを市場の評価額で示す数値。の基準も満たせず、スタンダード市場への変更を申請しました。2026年、猶予期間の期限までに基準への適合が確認できず、東京証券取引所は監理銘柄(審査中)の指定理由を追加しています。市場区分変更の審査は、翌年まで続く見通しです。
運転代行の私的利用と、創業社長交代への道
不正請求問題への対応が続くさなか、サンウェルズはもう一つの問題に直面します。苗代亮達社長が、会社の運転代行サービスを私的な用途に使っていたことが発覚したのです。金額は約1,600万円にのぼりました。
苗代は後任が決まり次第、社長を退任する意向を示しました。2026年、厚生労働省出身の社外取締役だった新俊彦が新社長に就任し、苗代は取締役に退いています。信頼の再構築は、いまも途上にあります。
