サントリーグループの一事業として生まれ、自ら証券取引所に上場した会社。 海外のブランドを次々に買収して版図を広げ、いまは為替や関税の変動に業績が揺れる規模まで育った。 世界で戦う飲料グループの、ここまでの歩みだ。

01

創業から現在へ — ストーリー

1899 — 2008
鳥井商店から続く飲料事業の土台
サントリーグループの飲料・食品事業の源流は、1899年に創業した鳥井商店にさかのぼります。寿屋、サントリーへと社名を変えながら発展し、1972年にはサントリーフーズを設立して清涼飲料事業を本格化させました。この時点では、後にサントリー食品インターナショナルとなる法人はまだ存在していません。
2009
分社で「サントリー食品」誕生
サントリーは2009年、飲料・食品事業の受け皿としてサントリー食品株式会社を設立しました。同じ年、フランスの炭酸飲料大手オランジーナ・シュウェップス・グループと、ニュージーランドのフルコア・グループを相次いで子会社化し、海外事業の骨格を一気に整えています。
2011 — 2013
商号変更と東証一部上場
2011年、社名をサントリー食品インターナショナルに変更しました。2013年には東京証券取引所市場第一部に株式を上場し、この年最大級の新規株式公開となりました。
2013 — 2015
欧州・国内でブランド買収を加速
2013年、英グラクソ・スミスクラインからエナジー・スポーツドリンク「ルコゼード」と果汁飲料「ライビーナ」の事業を取得し、翌年から現地法人が製造・販売を始めました。2015年には日本たばこ産業の飲料自動販売機オペレーター事業子会社を取得し、缶コーヒー「ルーツ」などのブランドも手に入れ、国内の自販機網を広げています。
2017
セレボスの食品事業をクラフト・ハインツへ
子会社セレボス・パシフィックが手がけていた豪州・ニュージーランド・シンガポールの食品・インスタントコーヒー事業3社の全株式を、米クラフト・ハインツへ譲渡しました。目的は、その地域における事業の最適化だとされています。
2025
増収でも減益、関税とアジア低迷が直撃
2025年12月期は、売上収益1兆7,154億円(前期比1.1%増)と増収を確保したものの、営業利益は1,487億円(同7.2%減)の減益でした。ベトナムでの消費低迷やタイの天候不順でアジアパシフィック事業が落ち込み、米国の関税政策で原材料の調達費用も膨らみました。
2026
「サントリービバレッジ&フード」に商号変更
社名をサントリービバレッジ&フードに変更しました。英文表記のSuntory Beverage & Food Limitedは変更せず、グローバルで統一してこの商号を使っていくために、日本語の社名を英文表記に合わせた形です。
TEN YEARS

10年で、売上は約1.2倍

2兆円
1兆円
2016 · · · · · · · · 2025
売上 純利益(手元に残った利益)
売上
10年前
14,108億円
現在
17,154億円
約1.2倍に増加
純利益
(手元に残った利益)
10年前
461億円
現在
887億円
売上100円につき約5円
従業員
10年前
23,850
現在
22,700
ほぼ横ばい
02

事業の構造 — 何で稼いでいるか

柱 01
日本事業
国内の主力事業です。「サントリー天然水」「BOSS」「伊右衛門」などの主要ブランドを、自動販売機を含む販売網で展開する収益の柱になっています。
柱 02
アジアパシフィック事業
ペプシコとの合弁会社やセレボス・パシフィックを通じ、東南アジア・オセアニアで清涼飲料を展開する事業です。現地の天候や競合の動きの影響を受けやすい事業でもあります。
柱 03
欧州事業
買収で獲得したオランジーナ・シュウェップスや、ルコゼード・ライビーナなどのブランドを中心に、フランスや英国で清涼飲料を展開する事業です。
柱 04
米州事業
ペプシコ社との合弁を軸に、米国を中心とした清涼飲料の製造・販売を担う事業です。
03

投資指標

株価
——
東証プライム
前日比
——
——
配当利回り
——
年間予想
PER
——
株価収益率
PBR
——
株価純資産倍率
時価総額
——
円換算
52週高値
——
過去1年
52週安値
——
過去1年

取得中…

投資家の博士

投資家目線のポイント

この会社の利益は、為替や関税、海外の天候といった自分ではコントロールできない要因で振れやすい構造になっています。2025年12月期は売上が伸びても、米国の関税やアジアの天候不順で利益が減りました。海外の売上比率が高いぶん、国内のニュース感覚だけでは業績を読み違えやすい会社だと言えそうです。

鳥井商店の飲料事業、2009年に分社という選択

サントリーグループの清涼飲料事業は、1972年設立のサントリーフーズを軸に育ってきました。転機が訪れたのは2009年です。グループの飲料・食品事業の受け皿として、サントリー食品株式会社が新たに設立されました。

グループの歴史そのものは1899年創業の鳥井商店にさかのぼりますが、法人としてのこの会社が生まれたのは、あくまでこの2009年の分社です。

3,000億円――「オランジーナ」買収という賭け

設立と同じ2009年、サントリー食品はフランス・スペインで長く愛されてきた炭酸飲料「オランジーナ」を展開するOrangina Schweppes Groupを、3,000億円を超える金額で買収したと報じられています。売り手はブラックストーン・グループとライオン・キャピタルでした。

翌年には売上が1,200億円を超え、2012年には日本向けの独自パッケージを開発して国内販売を始めています。炭酸飲料から離れがちだった30代以上の「大人世代」を狙った一手でした。

フルコア、セレボス、オランジーナ――ひとつの名前に

ニュージーランドのフルコア・グループ、シンガポール発祥のセレボス・パシフィック、フランスのオランジーナ・シュウェップス、そして米州のペプシ・ボトリング・ベンチャーズ——いずれもサントリーグループが買収や合弁で築いてきた海外の清涼飲料事業です。2011年、社名を「サントリー食品インターナショナル」に変更し、海外展開を前面に出す会社になりました。

持株会社ではなく、子会社を上場させる

2013年、上場したのは持株会社他の会社の株式を保有し、グループ全体の経営管理を担う会社。自らは事業を行わないことが多い。のサントリーホールディングスではなく、子会社のサントリー食品インターナショナルでした。

初値新規上場した株式が取引所で最初に成立する取引価格。は公開価格を上回る3,120円、時価総額株価に発行済み株式数をかけた金額。企業の大きさを市場の評価額で示す数値。は約9,700億円で、この年最大級の新規株式公開になりました。調達した約3,900億円は、人口増が見込める東南アジアなどでのM&A企業の合併・買収の総称。他社の株式や事業を取得して一体化すること。に充てる計画でした。

「ルコゼード」「ライビーナ」――英国の看板ブランドごと

2013年、サントリー食品は英グラクソ・スミスクライン(GSK)から、エナジー・スポーツドリンク「ルコゼード」と果汁飲料「ライビーナ」の事業を13億5,000万ポンド(当時の為替で約2,100億円)で取得すると発表しました。

ルコゼードは1927年、ライビーナは1938年に発売された、いずれも80年前後の歴史を持つブランドでした。翌年、事業を引き継いだ現地法人が製造・販売を始めています。

缶コーヒー「ルーツ」を手に入れた自販機買収

2015年、サントリー食品は日本たばこ産業(JT)の飲料自動販売機オペレーター事業子会社を、約1,500億円で取得しました。もとはJTグループが展開していた缶コーヒー「ルーツ」や「桃の天然水」といったブランドも、この買収でサントリー食品のものになっています。

自販機の運営会社ジャパンビバレッジホールディングスは、もともとサントリー食品が出資する会社でした。株式を追加取得し、国内の自販機網を一気に広げる一手になりました。

260億円で手放した食品事業

2017年、子会社セレボス・パシフィックが豪州・ニュージーランド・シンガポールで手がけていた食品・インスタントコーヒー事業3社を、米クラフト・ハインツへ約260億円で譲渡すると発表しました。目的は、その地域における事業の最適化だとされています。

成長市場と位置づけたフレッシュコーヒー事業はグループに残し、食品・インスタントコーヒー事業だけを手放す判断でした。買収で取り込んだ事業のすべてを、そのまま抱え続けたわけではありません。

増収でも利益が減る――関税とアジアの天候に振れた2025年

2025年12月期、サントリー食品は売上収益こそ1兆7,154億円(前期比1.1%増)と伸ばしましたが、営業利益は1,487億円(同7.2%減)の減益でした。ベトナムでは水以外の飲料の消費が振るわず、タイでは雨期の到来が早まって主力の炭酸飲料が落ち込みました。

同時に、米国の関税政策でアルミ缶やペプシ原液の調達費用が想定より膨らみました。世界で稼ぐ会社になったことの裏返しとして、為替や関税、天候といった自分では動かせない要因に業績が左右される年になりました。

ブランド力を軸に描く、次の成長ステージ

関税やアジアの天候に業績が振れた年でも、サントリービバレッジ&フードは2024年からの中期経営計画で2026年までに営業利益率売上高に対して、本業のもうけ(営業利益)が占める割合を示す指標。10%超を目指す方針を掲げています。「サントリー天然水」「BOSS」「伊右衛門」といった主力ブランドの価値強化を続けながら、コーヒーや茶飲料の展開エリア拡大や、RTD(缶チューハイなど、すぐ飲めるアルコール飲料)といった新しいカテゴリーへの挑戦も進めています。

投資の枠として、この計画期間中に上限6,000億円をM&Aや設備増強に振り向ける方針も示されており、2030年には売上収益2兆5,000億円をめざす長期目標を掲げています。買収で広げてきたブランド群を、今度は自らの成長エンジンとして育てる段階に入っています。