ネット証券最大手のSBI証券を率いるSBIホールディングス。 孫正義に請われた男が1999年に立ち上げた投資会社は、ITバブル崩壊を機に証券・銀行・保険を束ねる金融グループへ姿を変えた。 いまはSBI新生銀行を傘下に収め、暗号資産の世界にも踏み込んでいる。
創業から現在へ — ストーリー
10年で、売上は約7.2倍
(手元に残った利益)
事業の構造 — 何で稼いでいるか
投資指標
取得中…
投資家目線のポイント
金融サービス以外に、資産運用・PE投資・暗号資産という市場環境で業績が振れやすい事業を抱えています。新生銀行の子会社化のような一時的な要因で大幅増益になる年もあり、単年度の伸び率だけで判断しない視点が参考になりそうです。
SBIホールディングス(8473)と、傘下のSBI新生銀行(8303)は別の上場銘柄です。グループ内に複数の上場会社があるため、どちらの株価・決算のニュースかを混同しないよう注意が必要です。
北尾吉孝、孫正義に請われる——投資会社の船出
北尾吉孝は野村證券からロンドンの投資銀行ワッサースタイン・ペレラへ転じ、国際的なM&A企業の合併・買収の総称。他社の株式や事業を取得して一体化すること。の経験を積んでいました。野村證券時代にソフトバンクの株式公開を担当した縁で孫正義に声をかけられ、1995年、ソフトバンクの常務取締役に転じています。
1999年、孫正義の依頼を受けた北尾は「ソフトバンク・インベストメント」を設立し、代表取締役社長に就任しました。幼少期から中国古典・論語を愛読してきたという北尾は、のちにこの投資会社を、証券・銀行・保険を束ねる金融グループへと育てていくことになります。
ITバブル崩壊で見えた弱点——「景気に左右されない収益源」への転換
2000年に大阪証券取引所へ上場したソフトバンク・インベストメントは、翌2001年のITバブル崩壊で、投資事業だけに頼る収益の不安定さを痛感します。
北尾は「景気に左右されない収益源」を掲げ、金融サービスへの多角化に舵を切りました。2003年、オンライン証券のイー・トレード証券を吸収合併し、証券・銀行・保険を束ねる構想が動き出しています。
「戦略的事業革新者」への改名——ソフトバンクからの独立
2005年、会社は商号を「SBIホールディングス」に改め、純粋持株会社体制へ移行しました。
2006年、ソフトバンクグループは保有していた株式を段階的に売却し、SBIホールディングスはソフトバンクから完全に独立しました。同時にSBIの意味も「ソフトバンク・インベストメント」から「戦略的な事業の革新者(Strategic Business Innovator)」へと変わっています。祖業の投資会社は、こうして自分の足で立つグループになりました。
リップル社への出資——暗号資産を早くから仕込んだ賭け
2016年、SBIホールディングスはブロックチェーン企業リップル社への出資と、アジア地域向け合弁会社設立の覚書を締結しました。
SBIが60%、リップル社が40%を出資して「SBI Ripple Asia」を設立し、決済基盤としての活用を模索しました。
「地銀連合構想」——目指すは第四のメガバンク
2019年、北尾は経営が厳しい地方銀行に出資し、フィンテックや運用のノウハウを提供する「地銀連合構想」を打ち出しました。島根銀行や福島銀行、筑波銀行など複数の地銀と資本提携を結んでいます。
北尾は「支配しようという発想はない」と述べ、地銀の連合体を「第四のメガバンク」に育てる狙いを語っています。
敵対的TOBの末——新生銀行、47.77%取得の舞台裏
2021年、SBIホールディングスは新生銀行に事前通告なしで公開買付け(TOB)を発表しました。新生銀行は「当行取締役会の賛同を得て実施されるものではない」と反発し、対抗企業との統合交渉を進めて応戦します。
対抗提案は同年中に取り下げられ、TOBは成立しました。SBIは47.77%の株式を取得し、新生銀行を連結子会社親会社の決算に売上・利益をまとめて計上する子会社。親会社が過半数の議決権を持つ会社などが対象。化しています。日本の金融業界では異例の展開でした。
SBIソーシャルレンディング——太陽光ベンチャーが開けた145億円の穴
子会社のSBIソーシャルレンディングは、太陽光発電関連会社に融資していました。この融資先は借入金の一部を募集時の説明と異なる目的に使っていたことが発覚し、経営者は詐欺容疑で逮捕されています。
2021年、金融庁はSBIソーシャルレンディングに業務停止命令を出しました。同社はソーシャルレンディング事業から撤退し、SBIホールディングスは145億円の関連損失を計上しています。
「初値つり上げ」——金融庁が命じた7日間の業務停止
2024年、金融庁はSBI証券に行政処分を出しました。2020年から2021年にかけて、新規上場(IPO)3銘柄について、初値を公募価格以上に固定させるための買付けを顧客に勧誘していたと認定されたのです。
処分は、上場日の売買受託業務を7日間停止する業務停止命令と、経営陣の責任明確化を求める業務改善命令でした。国内ネット証券最大手が、証券会社としての根幹に関わる不正で処分を受けた出来事です。
非上場から2年3か月——SBI新生銀行、1兆4,500億円で市場に戻る
2023年、新生銀行はSBI新生銀行へと社名を変えたのち、子会社SBI地銀ホールディングスによる追加のTOBで上場廃止となりました。非上場化によって株価を意識せず経営できるようになったことが、公的資金の返済ペースを速めたとされています。
非上場化から2年余り、SBIグループは2025年に残る公的資金を完済し、SBI新生銀行は東証プライムに再上場しました。再上場時の時価総額株価に発行済み株式数をかけた金額。企業の大きさを市場の評価額で示す数値。はおよそ1兆4,500億円。金融サービス事業を軸に、SBIホールディングスは規模を広げ続けています。
