ネット証券最大手のSBI証券を率いるSBIホールディングス。 孫正義に請われた男が1999年に立ち上げた投資会社は、ITバブル崩壊を機に証券・銀行・保険を束ねる金融グループへ姿を変えた。 いまはSBI新生銀行を傘下に収め、暗号資産の世界にも踏み込んでいる。

01

創業から現在へ — ストーリー

1999 — 2000
孫正義に請われた北尾吉孝、投資会社を設立
1999年、ソフトバンク常務だった北尾吉孝は、孫正義の依頼を受けて「ソフトバンク・インベストメント」を設立し、代表取締役社長に就任しました。北尾はかつて野村證券やロンドンの投資銀行で経験を積み、その縁で1995年にソフトバンクの常務取締役に転じた人物です。設立の翌年には大阪証券取引所のナスダック・ジャパン市場に上場しています。
2001 — 2003
ITバブル崩壊で、証券・銀行・保険の多角化へ
2001年のITバブル崩壊で、投資事業だけに頼る収益の不安定さが浮き彫りになりました。北尾は「景気に左右されない収益源」を掲げて金融サービスへの多角化を決断します。2003年、オンライン証券のイー・トレード証券を吸収合併し、証券・銀行・保険を束ねる構想が動き出しました。
2005 — 2006
「戦略的事業革新者」への改名、ソフトバンクから独立
2005年、商号を「SBIホールディングス」に変更し、純粋持株会社他の会社の株式を保有し、グループ全体の経営管理を担う会社。自らは事業を行わないことが多い。体制に移行しました。2006年、ソフトバンクグループが保有株式を段階的に売却し独立を果たすとともに、SBIの意味も「ソフトバンク・インベストメント」から「戦略的な事業の革新者(Strategic Business Innovator)」へと変わっています
2007 — 2016
ネット銀行・保険を開業、リップル社に出資
2007年、住友信託銀行との合弁で住信SBIネット銀行を開業しました。翌年にはSBI損保も開業し、証券・銀行・保険が揃う体制が整っています。2016年には、ブロックチェーン企業リップル社へ出資し、アジア向け合弁会社を設立しました。
2019 — 2021
地銀連合構想、新生銀行への公開買付け
2019年、北尾は経営の厳しい地方銀行に出資し、フィンテックを提供する「地銀連合構想」を打ち出しました。2021年には新生銀行に公開買付け(TOB買収したい会社の株式を、価格・期間・株数をあらかじめ公表して市場外で買い集める手法。)を仕掛け、取締役会の賛同がないまま買い進める異例の展開となりました。TOBは同年内に成立し、47.77%の株式を取得しています。
2021 — 2024
ソーシャルレンディングとIPOで相次いだ行政処分
2021年、子会社のSBIソーシャルレンディングが、融資先の資金使途を巡る問題で金融庁から業務停止命令を受け、SBIホールディングスは145億円の関連損失を計上しました。2024年には、SBI証券がIPO銘柄の初値新規上場した株式が取引所で最初に成立する取引価格。をつり上げていたとして、金融庁から7日間の業務停止命令を受けています。
2023 — 2026
ゼロ革命と、新生銀行の非上場化・再上場
2023年、SBI証券は国内株式の売買手数料を無料にする「ゼロ革命」を始め、口座数を急拡大させました。同じ年、SBI新生銀行(旧・新生銀行)は子会社SBI地銀ホールディングスの追加TOBで上場廃止株式が取引所での売買対象でなくなること。となりましたが、2025年に公的資金を完済し、東証プライム東京証券取引所の上場区分の一つ。2022年の市場再編で、上場企業はプライム・スタンダード・グロースの3区分に分けられた(それ以前は市場第一部・第二部やマザーズと呼ばれていた)。へ再上場を果たしています。2026年3月期の連結収益は1兆8,966億円に達しました。
TEN YEARS

10年で、売上は約7.2倍

2兆円
1兆円
2017 · · · · · · · · 2026
売上 純利益(手元に残った利益)
売上
10年前
2,619億円
現在
18,966億円
約7.2倍に増加
純利益
(手元に残った利益)
10年前
325億円
現在
4,276億円
売上100円につき約23円
従業員
10年前
4,455
現在
18,669
約4.2倍に増加
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事業の構造 — 何で稼いでいるか

柱 01
金融サービス事業
SBI証券、住信SBIネット銀行、SBI新生銀行、SBI損保など、証券・銀行・保険を横断する中核事業です。SBI証券は証券総合口座1,600万口座を突破し、国内ネット証券の最大手として個人の資産形成を支えています。
柱 02
資産運用事業
グループ内の資産運用会社群を束ねる事業セグメントです。金融サービス事業とは切り分けられた独立の区分として、決算資料で開示されています。
柱 03
PE投資事業
プライベート・エクイティ(PE、未上場企業への投資)を手がける事業です。5つの事業セグメントの中で最も新しく独立した区分です。
柱 04
暗号資産事業
SBI VCトレードなど暗号資産交換業を中心とした事業です。2016年にリップル社へ出資して以来、ブロックチェーン関連への早期投資を続けています。
柱 05
次世代事業
半導体など、金融の外側への投資を担う事業です。台湾PSMCとの提携による国内ファウンドリー構想など、新しい産業への布石を打っています。
03

投資指標

株価
——
東証プライム
前日比
——
——
配当利回り
——
年間予想
PER
——
株価収益率
PBR
——
株価純資産倍率
時価総額
——
円換算
52週高値
——
過去1年
52週安値
——
過去1年

取得中…

投資家の博士

投資家目線のポイント

金融サービス以外に、資産運用・PE投資・暗号資産という市場環境で業績が振れやすい事業を抱えています。新生銀行の子会社化のような一時的な要因で大幅増益になる年もあり、単年度の伸び率だけで判断しない視点が参考になりそうです。

SBIホールディングス(8473)と、傘下のSBI新生銀行(8303)は別の上場銘柄です。グループ内に複数の上場会社があるため、どちらの株価・決算のニュースかを混同しないよう注意が必要です。

北尾吉孝、孫正義に請われる——投資会社の船出

北尾吉孝は野村證券からロンドンの投資銀行ワッサースタイン・ペレラへ転じ、国際的なM&A企業の合併・買収の総称。他社の株式や事業を取得して一体化すること。の経験を積んでいました。野村證券時代にソフトバンクの株式公開を担当した縁で孫正義に声をかけられ、1995年、ソフトバンクの常務取締役に転じています。

1999年、孫正義の依頼を受けた北尾は「ソフトバンク・インベストメント」を設立し、代表取締役社長に就任しました。幼少期から中国古典・論語を愛読してきたという北尾は、のちにこの投資会社を、証券・銀行・保険を束ねる金融グループへと育てていくことになります。

ITバブル崩壊で見えた弱点——「景気に左右されない収益源」への転換

2000年に大阪証券取引所へ上場したソフトバンク・インベストメントは、翌2001年のITバブル崩壊で、投資事業だけに頼る収益の不安定さを痛感します。

北尾は「景気に左右されない収益源」を掲げ、金融サービスへの多角化に舵を切りました。2003年、オンライン証券のイー・トレード証券を吸収合併し、証券・銀行・保険を束ねる構想が動き出しています。

「戦略的事業革新者」への改名——ソフトバンクからの独立

2005年、会社は商号を「SBIホールディングス」に改め、純粋持株会社体制へ移行しました。

2006年、ソフトバンクグループは保有していた株式を段階的に売却し、SBIホールディングスはソフトバンクから完全に独立しました。同時にSBIの意味も「ソフトバンク・インベストメント」から「戦略的な事業の革新者(Strategic Business Innovator)」へと変わっています。祖業の投資会社は、こうして自分の足で立つグループになりました。

リップル社への出資——暗号資産を早くから仕込んだ賭け

2016年、SBIホールディングスはブロックチェーン企業リップル社への出資と、アジア地域向け合弁会社設立の覚書を締結しました。

SBIが60%、リップル社が40%を出資して「SBI Ripple Asia」を設立し、決済基盤としての活用を模索しました。

「地銀連合構想」——目指すは第四のメガバンク

2019年、北尾は経営が厳しい地方銀行に出資し、フィンテックや運用のノウハウを提供する「地銀連合構想」を打ち出しました。島根銀行や福島銀行、筑波銀行など複数の地銀と資本提携を結んでいます。

北尾は「支配しようという発想はない」と述べ、地銀の連合体を「第四のメガバンク」に育てる狙いを語っています。

敵対的TOBの末——新生銀行、47.77%取得の舞台裏

2021年、SBIホールディングスは新生銀行に事前通告なしで公開買付け(TOB)を発表しました。新生銀行は「当行取締役会の賛同を得て実施されるものではない」と反発し、対抗企業との統合交渉を進めて応戦します。

対抗提案は同年中に取り下げられ、TOBは成立しました。SBIは47.77%の株式を取得し、新生銀行を連結子会社親会社の決算に売上・利益をまとめて計上する子会社。親会社が過半数の議決権を持つ会社などが対象。化しています。日本の金融業界では異例の展開でした。

SBIソーシャルレンディング——太陽光ベンチャーが開けた145億円の穴

子会社のSBIソーシャルレンディングは、太陽光発電関連会社に融資していました。この融資先は借入金の一部を募集時の説明と異なる目的に使っていたことが発覚し、経営者は詐欺容疑で逮捕されています。

2021年、金融庁はSBIソーシャルレンディングに業務停止命令を出しました。同社はソーシャルレンディング事業から撤退し、SBIホールディングスは145億円の関連損失を計上しています。

「初値つり上げ」——金融庁が命じた7日間の業務停止

2024年、金融庁はSBI証券に行政処分を出しました。2020年から2021年にかけて、新規上場(IPO)3銘柄について、初値を公募価格以上に固定させるための買付けを顧客に勧誘していたと認定されたのです。

処分は、上場日の売買受託業務を7日間停止する業務停止命令と、経営陣の責任明確化を求める業務改善命令でした。国内ネット証券最大手が、証券会社としての根幹に関わる不正で処分を受けた出来事です。

非上場から2年3か月——SBI新生銀行、1兆4,500億円で市場に戻る

2023年、新生銀行はSBI新生銀行へと社名を変えたのち、子会社SBI地銀ホールディングスによる追加のTOBで上場廃止となりました。非上場化によって株価を意識せず経営できるようになったことが、公的資金の返済ペースを速めたとされています。

非上場化から2年余り、SBIグループは2025年に残る公的資金を完済し、SBI新生銀行は東証プライムに再上場しました。再上場時の時価総額株価に発行済み株式数をかけた金額。企業の大きさを市場の評価額で示す数値。はおよそ1兆4,500億円。金融サービス事業を軸に、SBIホールディングスは規模を広げ続けています。