カネボウ、ダイエー——政府の企業再生機構で修羅場をくぐった弁護士と証券アナリストが、 2007年に立ち上げた会社だ。 企業再生の現場で鍛えた経営支援力で成長してきたが、 いま共同創業者の退任をきっかけとする大きな内輪もめのただ中にいる。

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創業から現在へ — ストーリー

1992 — 2003
弁護士とアナリスト、別々の道から企業再生へ
大西正一郎氏は1992年に弁護士登録し、倒産処理を専門とする弁護士として約11年間の経験を積みました。一方の松岡真宏氏は野村総合研究所やUBS証券などで、小売・流通業界を担当する証券アナリストとして10年以上活動していました。畑違いの2人は、2003年に設立された政府系の企業再生組織「産業再生機構」で顔を合わせることになります。
2003 — 2007
産業再生機構でカネボウ・ダイエーの再建を担当
産業再生機構で、大西氏と松岡氏はともにマネージングディレクターとして、カネボウやダイエーといった大型の再生案件を手がけました。弁護士・会計士・アナリスト・投資銀行出身者など異なる専門性を持つ人材が一つのチームを組む働き方に、2人は大きな手応えを感じたと本人らは振り返っています。産業再生機構の役割が一段落したあと、2007年、2人はフロンティア・マネジメント株式会社を設立しました。
2007 — 2012
東京で創業、上海・シンガポールへ拠点を広げる
2007年、資本金8,500万円で東京都港区に設立されました。2011年には中国・上海に現地法人を設立し、2012年にはシンガポール支店を開設しています。国内では常駐型の経営改革支援に特化した子会社「フロンティア・ターンアラウンド」も立ち上げ、再生案件に強いコンサルティング会社としての基盤を固めていきました。
2017 — 2020
ニューヨーク進出、そして東証マザーズへの上場
2017年にニューヨーク支店を開設し、北米の日系企業支援にも乗り出しました。2018年、東証マザーズに上場します。公募価格2,260円に対し初値は5,000円と2倍以上をつけ、市場の期待の高さを示しました。2020年には東証一部に昇格しています。
2022 — 2024
プライム市場へ移行、人事コンサルとM&A投資も強化
2022年、人事コンサルティング会社セレブレインをグループ化し、東証プライム市場へ移行しました。同じ年に投資子会社フロンティア・キャピタルも設立し、コンサルティングだけでなく投資による支援にも事業を広げています。2023年にはフランスのM&Aアドバイザリー企業と資本業務提携し、翌年にはパリ支店も開設しました。
2024 — 2025
共同創業者の退任と、2期連続の赤字
2024年、共同創業者の松岡真宏氏が代表取締役を退任し、取締役になりました。同じ年の後半には保有株式の大半を外部の会社に売却しています。この人事をきっかけに主力のコンサルティング部門で離職が相次ぎ、2024年12月期・2025年12月期と2期連続の営業赤字に転落し、2025年12月期は無配となりました。2025年12月期の売上高は134億円まで伸びましたが、これは新たに拡大した投資事業の押し上げによるもので、主力のコンサルティング・アドバイザリー事業は減収でした。
2025 — 2026
社外取締役3名が一斉辞任、黒字化を計画
2025年に就任した新社長が同年末に辞任を申し出るなど経営の混乱が続き、社外取締役3名が「異例の意見」を提出したうえで一斉に辞任するという事態も起きました。大西正一郎会長兼社長は「ガバナンスの危機ではない」と説明しています。会社は2026年12月期の黒字化を計画として掲げています。
02

事業の構造 — 何で稼いでいるか

柱 01
経営コンサルティング・経営執行支援
顧客企業の戦略立案から、コンサルタント自身が現場に常駐して改革を実行する「経営執行支援」まで手がける中核事業です。助言と実行の両方に対応するのが特徴で、人事・DXなど幅広いテーマを扱います。
柱 02
M&Aアドバイザリー・事業再生支援
企業のM&Aを助言するファイナンシャル・アドバイザリー業務と、業績不振企業の再建を支援する事業再生業務です。産業再生機構でカネボウやダイエーの再生を手がけた創業者2人の経歴に連なる、再生の現場に強い事業です。
柱 03
投資事業
子会社フロンティア・キャピタルや、日本政策投資銀行との合弁会社を通じて、顧客企業に資金支援を行う事業です。コンサルティングで培った知見をもとに、助言だけでなく資本も入れて支援する、比較的新しい柱です。
柱 04
人事・組織コンサルティング
グループ会社セレブレインが担う、人事制度や組織開発に関するコンサルティングです。総合的な経営支援ファームとして、「人」の課題にも対応できる体制を補っています。
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投資指標

株価
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東証プライム
前日比
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配当利回り
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年間予想
PER
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株価収益率
PBR
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株価純資産倍率
時価総額
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円換算
52週高値
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過去1年
52週安値
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過去1年

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投資家の博士

投資家目線のポイント

コンサルティング会社の価値の多くは「人」にあります。創業メンバーの退任をきっかけに人材が流出すると、業績への影響が数字に表れやすいという点は、この会社の直近の業績が示す通りです。人事関連のニュースが出たときは、業績への波及を意識して見る視点が参考になりそうです。

投資事業の拡大によって売上高は伸びていますが、主力のコンサルティング・アドバイザリー事業の増減とは別に見る必要があります。売上高だけでなく、どの事業が伸び、どの事業が苦戦しているかをセグメントごとに確認する視点が参考になりそうです。

弁護士とアナリスト、産業再生機構で出会う

大西正一郎氏は早稲田大学法学部を卒業後、1992年に弁護士登録しました。奥野総合法律事務所で、倒産処理を専門とする企業再生専門の弁護士として約11年間経験を積みます。

一方の松岡真宏氏は東京大学経済学部を卒業後、野村総合研究所やバークレイズ証券、UBS証券で証券アナリストとして10年以上活動し、1999年にはUBS証券の株式調査部長に就任しました。小売・流通業界を10年以上見続けたアナリストという、大西氏とはまったく違う経歴の持ち主でした。

三井鉱山、カネボウ——産業再生機構での再建案件

2003年に発足した産業再生機構は、負債総額2兆3,800億円規模の日本リース再建をはじめ、大型の企業再生案件を手がけた組織でした。大西氏はこの産業再生機構で、三井鉱山やカネボウの再建を担当したといいます。

チームで課題を解く発想が、創業の原点になった

2003年に設立された産業再生機構は、政府が主導して企業再生を手がける、世界でも前例のない組織でした。大西氏と松岡氏はともにマネージングディレクターとして入社し、松岡氏はカネボウとダイエーの再生計画づくりに携わり、両社の取締役として実行にも関わりました。

弁護士・会計士・アナリスト・投資銀行出身者など、異なる専門性を持つ人材がチームを組んだときに大きな力が発揮される——この気付きが、2人にとって創業の原点になったといいます。産業再生機構の役割が一段落したあと、2007年、2人はこの発想をそのまま会社にしました。

「ユーザー至上主義」——助言だけで終わらない会社

フロンティア・マネジメントが掲げてきたのが「ユーザー至上主義」という考え方です。松岡氏は、多くの産業が「売り手発想」から「買い手発想」へ転換したのに対し、法律事務所や会計事務所などの知的サービス業は、いまも売り手目線が残りやすいと指摘していました。

これに対し同社は、法律・会計・ファイナンス・ビジネスといった側面を社内で総合的に検証したうえで複数の解決案を提示し、必要であればコンサルタント自身が現場に常駐して改革を実行するというスタイルを取ってきました。

公募価格の2倍以上——2018年の株式上場

2018年、フロンティア・マネジメントは東証マザーズに上場しました。公募価格は2,260円でしたが、初値は5,000円と2倍以上の値がつき、市場の期待の高さを示しました。

その後も2020年に東証一部、2022年に東証プライムへと市場を移していきました。

老舗ホビーメーカー、壽屋(コトブキヤ)の経営改善

フロンティア・マネジメントが公表している支援事例の一つが、フィギュアやプラモデルで知られるホビーメーカー、株式会社壽屋(コトブキヤ)です。以前は経営情報が管理職層まで十分に伝わっていなかったという課題に対し、「部署横断プロジェクトチーム」「企画審査会議」「モニタリング会議」「経営委員会」といった新しい会議体を導入し、経営層と各部門を有機的につなぐ取り組みを支援しました。

各部署の戦略やそれぞれの取り組みの進み具合を組織全体で共有できるようになったことが、同社の成果につながっているといいます。助言にとどまらず実行まで伴走する、同社らしい事例の一つです。

温泉旅館グループの統合を支える

支援事例のもう一つが、大江戸温泉物語株式会社と湯快リゾート株式会社です。フロンティア・マネジメントは、投資ファンド傘下に入ったこの2社のPMI(統合後の経営統合作業)を支援しました。

M&Aで会社を一つにすることと、実際に組織や業務を一つにまとめ上げることは別の難しさがあります。再生支援で培った「現場に入り込む」ノウハウが、こうした統合支援にも生かされています。

共同創業者の退任と、いまも続く経営の混乱

2024年、共同創業者で共同社長だった松岡真宏氏が代表取締役を退任し、取締役になりました。会社側は「一身上の都合」と説明しています。同じ年の後半には、松岡氏が保有株式の大半を外部の会社に売却しました。

この人事をきっかけに、松岡氏と関係の近かった社員の離職が相次いだと報じられています。主力のコンサルティング部門の売上は落ち込み、2024年12月期・2025年12月期と2期連続の営業赤字、2025年12月期は無配に転落しました。2025年には新社長の就任と辞任、社外取締役3名の一斉辞任という出来事も続いています。大西正一郎会長兼社長は「ガバナンスの危機ではない」と説明しており、会社は2026年12月期の黒字化を計画として掲げています。

主な参考資料(14件)