かっぱえびせんとポテトチップスを生んだカルビーは、広島の小さな製菓会社から始まった。 戦後の栄養失調と闘うために生まれ、じゃがいも農家との契約栽培を武器に大きくなっていった。 いまはペプシコとの提携も経て、世界中でスナックを届ける会社になっている。

01

創業から現在へ — ストーリー

1949 — 1955
戦後の栄養失調対策から、松尾糧食工業が生まれる
松尾孝が18歳で継いだ家業をもとに、1949年に広島で法人化された松尾糧食工業(株)がカルビーの前身です。戦後の深刻な食糧不足で栄養失調に苦しむ人々に、カルシウムとビタミンB1を摂れる食品を届けたいという思いが出発点でした。1955年、社名をこの二つの栄養素にちなんでカルビー製菓(株)に改めています。
1964 — 1972
えびの記憶が生んだ「かっぱえびせん」、海外へも
1964年、広島産のえびを使った「かっぱえびせん」を発売しました。松尾孝が大好物だったえびの味を、社内で作っていた小麦のあられに重ねたのが始まりです。鮮度を保つため、他社に先駆けて水揚げしたエビをその場で凍結する技術を導入しました。1970年には米国にCalbee America, Inc.を設立し、海外にも進出しています。
1973 — 1980
ポテトチップス発売と、じゃがいも農家との契約栽培
1973年、本社を東京へ移し、社名をカルビー(株)に改めました。1975年に発売した「ポテトチップス」は、北海道副知事から聞いた生産じゃがいもの半分以上がでんぷんの原料や飼料に回っているという課題への答えでした。増える原料需要に応えるため、1980年には原料調達を専門に担うカルビーポテト(株)を設立し、全国の農家と直接契約する仕組みをつくっています。
2009 — 2011
ペプシコとの提携、そして株式上場
2009年、カルビーは米ペプシコと資本業務提携出資を伴いながら、特定の事業で協力関係を結ぶ提携の形態。を結びました。コーン系スナックに特化したジャパンフリトレーを完全子会社化ある会社の株式を100%取得し、経営の意思決定権を完全に握ること。し、ペプシコがカルビー株の20%を取得しています。同じ年、ジョンソン・エンド・ジョンソン出身の松本晃が会長兼CEOに就任しました。2011年、カルビーは東証一部東京証券取引所の上場区分の一つ。2022年の市場再編で、上場企業はプライム・スタンダード・グロースの3区分に分けられた(それ以前は市場第一部・第二部やマザーズと呼ばれていた)。に株式を上場しています。
2012 — 2015
「朝食市場」への転換と、中国からの撤退
松本体制のもと、2002年から2009年にかけて伸び悩んでいたシリアル「フルグラ」は、「シリアル」ではなく「朝食」の市場向けの商品として売り出す方針に転換したと報じられています売上は2010年度の約31億円から2015年度には約221億円まで伸びました。一方、2012年に浙江省で始めた中国の合弁事業は苦戦が続き、2015年、設立からわずか3年で持ち株を合弁相手に譲渡し撤退しています。
2018 — 2026
松本晃の退任と、海外事業の伸び
2018年、松本晃は任期満了を理由に会長兼CEOを退任しました。2026年3月期の売上高は前期比5.5%増の3,401億円となった一方、原材料費の上昇の影響で営業利益は前期比10.0%減の261億円でした。それでもカルビーは北米や欧州などで事業を広げ続け、海外売上高は2022年3月期の573億円から2026年3月期には886億円まで伸びています
TEN YEARS

10年で、売上は約1.3倍

4,000億円
2,000億円
2017 · · · · · · · · 2026
売上 純利益(手元に残った利益)
売上
10年前
2,524億円
現在
3,402億円
約1.3倍に増加
純利益
(手元に残った利益)
10年前
186億円
現在
173億円
売上100円につき約5円
従業員
10年前
3,860
現在
6,974
約1.8倍に増加
02

事業の構造 — 何で稼いでいるか

柱 01
国内のスナック・シリアル事業
ポテトチップス、じゃがりこ、かっぱえびせん、フルグラなど、ポテト系・小麦系・コーン系のスナック菓子とシリアル食品を扱う中核事業です。国内のスナック菓子市場で50%以上のシェアを持つと同社は説明しています。
柱 02
海外事業(北米・中華圏など11の国と地域)
北米と中華圏を重点地域に、海外11の国・地域でスナック菓子を展開しています。Harvest Snapsのような現地ブランドと、じゃがりこ・かっぱえびせんなど日本発ブランドの両輪で成長を目指しています。
柱 03
原料調達とじゃがいも農家との契約栽培(アグリビジネス)
カルビーポテト(株)を中心に、全国約1,700戸の契約農家からじゃがいもを仕入れる仕組みです。フィールドマンと呼ばれる専門スタッフが産地を回り、栽培技術の指導や収穫の支援を続けています。
柱 04
食と健康の新規事業
食生活提案や、エビデンスに基づく食と健康のソリューション事業を、将来の成長領域として育てています。
03

投資指標

株価
——
東証プライム
前日比
——
——
配当利回り
——
年間予想
PER
——
株価収益率
PBR
——
株価純資産倍率
時価総額
——
円換算
52週高値
——
過去1年
52週安値
——
過去1年

取得中…

投資家の博士

投資家目線のポイント

カルビーの原料はじゃがいもという農産物なので、天候による収穫量の変動に業績が左右されやすい構造です。2026年3月期は、原材料費の上昇が国内事業の利益を押し下げました。

海外事業は、2015年に中国の合弁事業からわずか3年で撤退した例がある一方、北米や欧州は伸びています。地域によって明暗が分かれやすい点は、海外事業のニュースを見るときの参考になりそうです。

「カル」と「ビー」——栄養失調と闘うために生まれた社名

戦後、深刻な食糧不足で栄養失調に苦しむ人が増えていました。松尾孝は18歳で継いだ家業をもとに、当時不足していたカルシウムとビタミンB1を補える食品をつくろうと考え、1949年に松尾糧食工業(株)として法人化しました。

1955年、社名をこの二つの栄養素にちなんで「カルビー」と改めています。困りごとから始まった名前が、いまも社名として残っています。

瀬戸内海の干しえびが生んだ「かっぱえびせん」

1955年に日本初の”小麦あられ”「かっぱあられ」を開発した後、松尾孝は瀬戸内海で干されるえびを見て、「大好物のえびを小麦あられに入れられないか」とひらめいたと伝えられています。

困難な試作を重ね、1964年に「かっぱえびせん」として発売しました。鮮度を保つため、水揚げしたエビをその場で冷凍する技術を他社に先駆けて導入しています。この商品はやがて100億円規模の売上を持つロングセラーとなり、いまも看板ブランドとして売れ続けています。

北海道副知事のひとことから始まったポテトチップス

1968年ごろ、松尾孝は北海道副知事から生産じゃがいもの半分以上がでんぷんの原料や家畜のえさに回っているという話を聞きました。未利用の資源を生かすという創業以来の発想から、じゃがいもを丸ごとスナックにする商品開発に乗り出します。

1975年に発売した「ポテトチップス」は、競合品150円に対して100円という安い価格を提案しました。原価率は高くなりましたが、販売数の増加で採算を合わせる戦略をとりました。

「二人三脚」で育てるじゃがいも——契約栽培という賭け

ポテトチップスが売れるほど、原料のじゃがいも不足が課題になっていきました。カルビーは1980年、原料調達を専門に担うカルビーポテト(株)を設立し、農家と直接契約を結ぶ仕組みをつくります。

フィールドマンと呼ばれる専門スタッフが産地を回り、栽培技術の指導や収穫の支援を続けた結果、いまでは全国約1,700戸の契約農家と、40年以上にわたる関係を築いています。

ペプシコとの提携——スナック業界を驚かせた資本異動

2009年、カルビーはジャパンフリトレーを完全子会社化し、同時にペプシコがカルビー株の20%を取得する資本業務提携を発表しました。業界関係者の間では「噂ですら出なかった話」と報じられるほどの驚きだったといいます。

この提携で、カルビーはポテト系商品に偏っていた商品構成に、コーン系スナックという新しい柱を加えることになりました。

500億円の目標と、1元での撤退——中国合弁の3年

カルビーは2012年、浙江省に合弁会社「カルビー(杭州)食品」を設立し、じゃがビーやかっぱえびせんを中国で売り出しました。当初は2018年3月期に中国全体で500億円という売上目標を掲げていましたが、実際の2015年3月期の売上高は約22億円にとどまっています

カルビーは2015年、合弁相手の康師傅方便食品投資に持ち株を1元(約19円)で譲渡し、設立からわずか3年で事業を終えました。その後は北米や欧州などに力を入れ、海外の売上高は2022年3月期の573億円から2026年3月期には886億円まで伸ばしています。

「シリアルではなく朝食」——フルグラの7倍成長

シリアル「フルグラ」は2002年から2009年にかけて、年間売上30億円程度で足踏みしていました。2009年に会長兼CEOに就任した松本晃のもと、フルグラは「シリアル市場」ではなく「朝食市場」向けの商品として売り出す方針に転換したと報じられています。

新しいマーケティングアプローチへの転換の結果、売上は2010年度の約31億円から2015年度には約221億円まで伸びました。2016年には生産能力を1.7倍に増やす工場投資も行っています。

任期満了で退いた松本晃、そのあとのカルビー

東証一部上場やペプシコとの提携、フルグラの急成長を主導した松本晃は、2018年、任期満了を理由に会長兼CEOを退任しました。就任から約9年での退任でした。

カルビーはその後も海外事業の拡大を続け、2026年3月期の海外売上高は886億円と、2022年3月期の573億円から大きく伸びています。国内では原材料費の上昇という課題もありましたが、海外事業は拡大を続けています。