レーヨンと化学から始まった会社は、住宅、医療機器、電池材料へと事業を広げてきました。 2015年の杭工事問題で信頼を揺るがせた旭化成は、三つの事業領域をまたぐ会社として、次の成長を探しています。
創業から現在へ — ストーリー
10年で、売上は約1.6倍
(手元に残った利益)
事業の構造 — 何で稼いでいるか
投資指標
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投資家目線のポイント
旭化成は、住宅・医療・素材をまたぐため、特定の市場だけでは会社全体を捉えにくい構造です。今後は、成長投資を続けるヘルスケアと住宅がどこまで利益を生み出すか、同時にマテリアルの構造転換が進むかを分けて見る必要があります。
2015年の杭工事問題は、事業の規模や多角化だけでは信頼を補えないことを示しました。中期計画の進捗を見る際には、成長目標だけでなく、事業運営とコンプライアンスの改善が持続しているかも重要な視点になります。
「1922年」——レーヨン工場から始まった
1922年、野口遵が設立した旭絹織株式会社が、旭化成の出発点です。1924年にはレーヨンの生産を始めました。公式の沿革は、より良い生活資材を豊富に低価格で提供することを目指して創業したと説明しています。
当時の主役は、人工繊維のレーヨンでした。現在の住宅や医療機器とは遠い製品ですが、生活に必要な素材を自らつくるという発想は、後の多角化の起点になりました。
「ヘーベル」——壁材を住宅ブランドへ育てた
1967年、現・旭化成は西ドイツから技術導入したALCコンクリート「ヘーベル」の国内生産を始めました。ヘーベルは、へーベルハウスやへーベルメゾンの主要構造部材として使われています。
素材を売るだけでなく、住まいの品質を支えるブランドへつなげた点に旭化成らしさがあります。化学・建材・住宅を別々にせず、顧客が実感する住まいまで届く形にした事業です。
「2003年」——一社に抱えず、事業会社を生かす
2003年、旭化成は分社・持株会社制へ移行しました。現在は事業持株会社と七つの事業会社による体制で、ヘルスケア、住宅、マテリアルの三領域を運営しています。
一つの素材会社の延長ではなく、異なる専門性を相互に活用する仕組みを選んだことが特徴です。公式サイトでは、多様な技術やナレッジ、ブランド、財務基盤、人財の力を領域の垣根を越えて相互活用する「エコシステム」を掲げています。
「ZOLL」——救命救急の現場へ踏み出す
2012年に旭化成グループへ加わったZOLL Medicalは、除細動、心臓モニタリング、人工呼吸、体温管理、睡眠時無呼吸の診断・治療に関わる機器とソフトウェアを提供しています。
この買収で旭化成は、従来の医薬・医療に加えてクリティカルケアへ本格進出しました。2023年にはヘルスケア領域の本部を米国に置き、事業運営をグローバル化する方針も示しています。
「2015年」——杭工事問題と、失われた信頼
2015年、旭化成建材が施工した杭工事について、施工報告書のデータ流用等が確認されました。旭化成建材は、調査可能な物件の調査を完了し、国土交通省へ結果を報告しました。旭化成は、この調査結果を公表しています。
同社は関係者への謝罪を表明し、翌年には「三現主義」と再発防止を掲げました。素材、住宅、医療へ広がった企業にとって、現場の記録と品質管理が信頼の基礎であることを突きつけた問題でした。
「三つの領域」——多角化は、強みでも課題でもある
旭化成は現在、ヘルスケア、住宅、マテリアルの三領域を手がけています。公式サイトは、三領域の間で技術、ブランド、人財、財務基盤などを相互活用することを、グループの強みとして説明しています。
一方で2025年の中期計画は、マテリアル領域の構造転換を明記しました。多角化した事業を同時に磨き直すことが、次の段階の課題になっています。
「Trailblaze Together」——投資の成果を問う三年間
2025年に始まった中期経営計画2027は、投資成果による利益成長、構造転換と生産性向上による資本効率改善、Diversity × Specialtyの進化を基本方針に掲げています。
拡大投資を続けるヘルスケアと住宅に加え、マテリアルでは厳選投資と構造転換を進める計画です。広げてきた事業を、収益へつなげられるかが問われる期間になります。
