サントリーグループの一事業として生まれ、自ら証券取引所に上場した会社。 海外のブランドを次々に買収して版図を広げ、いまは為替や関税の変動に業績が揺れる規模まで育った。 世界で戦う飲料グループの、ここまでの歩みだ。
創業から現在へ — ストーリー
10年で、売上は約1.2倍
(手元に残った利益)
事業の構造 — 何で稼いでいるか
投資指標
取得中…
投資家目線のポイント
この会社の利益は、為替や関税、海外の天候といった自分ではコントロールできない要因で振れやすい構造になっています。2025年12月期は売上が伸びても、米国の関税やアジアの天候不順で利益が減りました。海外の売上比率が高いぶん、国内のニュース感覚だけでは業績を読み違えやすい会社だと言えそうです。
鳥井商店の飲料事業、2009年に分社という選択
サントリーグループの清涼飲料事業は、1972年設立のサントリーフーズを軸に育ってきました。転機が訪れたのは2009年です。グループの飲料・食品事業の受け皿として、サントリー食品株式会社が新たに設立されました。
グループの歴史そのものは1899年創業の鳥井商店にさかのぼりますが、法人としてのこの会社が生まれたのは、あくまでこの2009年の分社です。
3,000億円――「オランジーナ」買収という賭け
設立と同じ2009年、サントリー食品はフランス・スペインで長く愛されてきた炭酸飲料「オランジーナ」を展開するOrangina Schweppes Groupを、3,000億円を超える金額で買収したと報じられています。売り手はブラックストーン・グループとライオン・キャピタルでした。
翌年には売上が1,200億円を超え、2012年には日本向けの独自パッケージを開発して国内販売を始めています。炭酸飲料から離れがちだった30代以上の「大人世代」を狙った一手でした。
フルコア、セレボス、オランジーナ――ひとつの名前に
ニュージーランドのフルコア・グループ、シンガポール発祥のセレボス・パシフィック、フランスのオランジーナ・シュウェップス、そして米州のペプシ・ボトリング・ベンチャーズ——いずれもサントリーグループが買収や合弁で築いてきた海外の清涼飲料事業です。2011年、社名を「サントリー食品インターナショナル」に変更し、海外展開を前面に出す会社になりました。
持株会社ではなく、子会社を上場させる
2013年、上場したのは持株会社他の会社の株式を保有し、グループ全体の経営管理を担う会社。自らは事業を行わないことが多い。のサントリーホールディングスではなく、子会社のサントリー食品インターナショナルでした。
初値新規上場した株式が取引所で最初に成立する取引価格。は公開価格を上回る3,120円、時価総額株価に発行済み株式数をかけた金額。企業の大きさを市場の評価額で示す数値。は約9,700億円で、この年最大級の新規株式公開になりました。調達した約3,900億円は、人口増が見込める東南アジアなどでのM&A企業の合併・買収の総称。他社の株式や事業を取得して一体化すること。に充てる計画でした。
「ルコゼード」「ライビーナ」――英国の看板ブランドごと
2013年、サントリー食品は英グラクソ・スミスクライン(GSK)から、エナジー・スポーツドリンク「ルコゼード」と果汁飲料「ライビーナ」の事業を13億5,000万ポンド(当時の為替で約2,100億円)で取得すると発表しました。
ルコゼードは1927年、ライビーナは1938年に発売された、いずれも80年前後の歴史を持つブランドでした。翌年、事業を引き継いだ現地法人が製造・販売を始めています。
缶コーヒー「ルーツ」を手に入れた自販機買収
2015年、サントリー食品は日本たばこ産業(JT)の飲料自動販売機オペレーター事業子会社を、約1,500億円で取得しました。もとはJTグループが展開していた缶コーヒー「ルーツ」や「桃の天然水」といったブランドも、この買収でサントリー食品のものになっています。
自販機の運営会社ジャパンビバレッジホールディングスは、もともとサントリー食品が出資する会社でした。株式を追加取得し、国内の自販機網を一気に広げる一手になりました。
260億円で手放した食品事業
2017年、子会社セレボス・パシフィックが豪州・ニュージーランド・シンガポールで手がけていた食品・インスタントコーヒー事業3社を、米クラフト・ハインツへ約260億円で譲渡すると発表しました。目的は、その地域における事業の最適化だとされています。
成長市場と位置づけたフレッシュコーヒー事業はグループに残し、食品・インスタントコーヒー事業だけを手放す判断でした。買収で取り込んだ事業のすべてを、そのまま抱え続けたわけではありません。
増収でも利益が減る――関税とアジアの天候に振れた2025年
2025年12月期、サントリー食品は売上収益こそ1兆7,154億円(前期比1.1%増)と伸ばしましたが、営業利益は1,487億円(同7.2%減)の減益でした。ベトナムでは水以外の飲料の消費が振るわず、タイでは雨期の到来が早まって主力の炭酸飲料が落ち込みました。
同時に、米国の関税政策でアルミ缶やペプシ原液の調達費用が想定より膨らみました。世界で稼ぐ会社になったことの裏返しとして、為替や関税、天候といった自分では動かせない要因に業績が左右される年になりました。
ブランド力を軸に描く、次の成長ステージ
関税やアジアの天候に業績が振れた年でも、サントリービバレッジ&フードは2024年からの中期経営計画で2026年までに営業利益率売上高に対して、本業のもうけ(営業利益)が占める割合を示す指標。10%超を目指す方針を掲げています。「サントリー天然水」「BOSS」「伊右衛門」といった主力ブランドの価値強化を続けながら、コーヒーや茶飲料の展開エリア拡大や、RTD(缶チューハイなど、すぐ飲めるアルコール飲料)といった新しいカテゴリーへの挑戦も進めています。
投資の枠として、この計画期間中に上限6,000億円をM&Aや設備増強に振り向ける方針も示されており、2030年には売上収益2兆5,000億円をめざす長期目標を掲げています。買収で広げてきたブランド群を、今度は自らの成長エンジンとして育てる段階に入っています。
