1717年創業の大丸と、1611年創業の松坂屋。何百年もの歴史を持つ老舗百貨店どうしが、2007年に一つの持株会社他の会社の株式を保有し、グループ全体の経営管理を担う会社。自らは事業を行わないことが多い。にまとまった。呉服店から始まった二つの店は、いまや百貨店を軸にした街づくり企業へと姿を変えている。
創業から現在へ — ストーリー
事業の構造 — 何で稼いでいるか
投資指標
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投資家目線のポイント
J.フロントリテイリングの業績は、近年インバウンド消費への依存度が高まっています。海外からの旅行者数や為替の動きが業績に影響しやすくなっている点は、意識しておきたい視点です。
GINZA SIXやパルコに代表されるまちづくり型の不動産開発は、投資から収益化までに長い時間がかかります。単年の百貨店業績だけでなく、開発案件の進捗を合わせて見る視点が参考になりそうです。
「先義後利」——大丸が掲げた商いの心得
1717年、下村彦右衛門正啓は京都伏見に呉服店「大文字屋」を開業しました。1726年には大阪心斎橋筋に「松屋」を開き、現金正札販売という商いを始めています。
1737年、大丸は店是「先義後利」(義を先にし、利を後にする、の意)の掛軸を全店に配布しました。同じ年、京都・東洞院船屋町に京都総本店が完成しています。掛け値なしの商いと店是が、この時期にそろって形になりました。
「大丸は義商なり、犯すなかれ」——大塩の乱を免れた大丸
1837年、大坂で大塩の乱が起きました。その最中、「大丸は義商なり、犯すなかれ」と唱えられ、大丸の店は焼き打ちを免れたと大丸公式の沿革に記されています。「先義後利」を掲げた商いの評判が、店を守ったという逸話です。
「いとう松坂屋」——名古屋の呉服問屋が上野の老舗を買収
1611年、伊藤蘭丸祐道が名古屋本町で呉服小間物問屋を開業したのが松坂屋の始まりです。1736年には問屋から小売商へと転業し、1740年には尾張徳川家の呉服御用達になっています。
1768年、いとう呉服店は上野広小路の松坂屋を買収し、「いとう松坂屋」として開業しました。名古屋の呉服商が東京に足場を築いた瞬間でした。
大丸と松坂屋、持株会社として一つに——J.フロントリテイリング誕生
2006年、松坂屋は純粋持株会社「松坂屋ホールディングス」を設立しました。2007年、大丸と松坂屋ホールディングスは共同持株会社「J.フロントリテイリング」を設立し、経営統合を実現しています。
2009年、両社は「フロンティア21プラン」のもとで事業会社の合併方針を発表し、翌2010年、大丸と松坂屋は合併して「大丸松坂屋百貨店」となりました。本社は大阪と名古屋から東京へ移り、両店の暖簾は残したまま、販売員の制服だけが新デザインに切り替わっています。
88年の松坂屋銀座店が幕を閉じ、「GINZA SIX」に生まれ変わる
1924年に開業した松坂屋銀座店は、2013年、88年の歴史に幕を下ろしました。銀座6丁目地区の再開発計画にともなうもので、松坂屋単独の建て替えではなく、周辺を含む2街区を合わせた再開発が計画されたためです。跡地の新施設について、親会社のJ.フロントリテイリングは「核テナントは松坂屋にこだわらない」との姿勢を示していました。
J.フロントリテイリングは森ビル・L Real Estate・住友商事と共同で再開発を進め、2017年、商業施設面積約4万7,000平方メートル、241店舗が入る「GINZA SIX」を開業しました。初年度の売上目標は600億円、来館者数は年間約2,000万人を見込んでいました。祖業の百貨店を、百貨店ではない商業施設に建て替えた再開発でした。
パルコを658億円で完全子会社に
J.フロントリテイリングは2012年にパルコ株式33.2%を取得し、同年中に65%まで買い増して連結子会社化しました。2019年、残る株式を対象にTOBを開始します。TOB価格は1株1,850円で、直前終値に対して約34.3%のプレミアムを乗せ、買付総額は658億円に達しました。
2020年、パルコは完全子会社となりました。その後、大丸松坂屋百貨店が持っていた不動産事業をパルコへ移管し、グループの不動産事業を一元化しています。
86年ぶりの建て替え——大丸心斎橋店、新本館グランドオープン
大丸心斎橋店本館は2019年、86年ぶりの建て替えを経てグランドオープンしました。新業態47店を含む約370店、368ブランドが入り、「Delight the World 世界が憧れる、心斎橋へ。」というコンセプトを掲げています。
翌2020年には隣接する心斎橋PARCOが開業しました。大丸松坂屋百貨店とパルコのグループ内連携を象徴する存在になっています。
地方百貨店の構造改革——下関大丸を吸収合併
大丸松坂屋百貨店は2018年に地方郊外店改革推進部を設置し、地方百貨店の再編を進めました。同年には鳥取大丸を新会社に分離する一方、2020年には下関大丸を吸収合併し、直営店に切り替えています。
下関大丸の2019年2月期の業績は、売上高133億5,200万円、営業利益7,800万円まで落ち込んでいました。交渉力・仕入力の強化や後方部門の組織集約が、この吸収合併のねらいでした。
