「お名前.com」で知られるGMOインターネットグループ。 熊谷正寿が1991年に立ち上げた会社を、日本で初めての独立系ネット企業として上場させた。 消費者金融事業の危機を立て直し、いまはFXから暗号資産まで手がける持株会社他の会社の株式を保有し、グループ全体の経営管理を担う会社。自らは事業を行わないことが多い。になった。

01

創業から現在へ — ストーリー

1991 — 1995
音声情報サービスの会社から、熊谷正寿がインターネットへ転身
1991年、熊谷正寿さんは東京都世田谷区で「株式会社ボイスメディア」を設立しました。最初の事業は、電話回線を使ったダイヤルQ2による音声情報サービスでした。1995年、急速に広がり始めていたインターネットに着目し、商号を「インターキュー株式会社」に改めてインターネット接続事業に本格参入します。
1997 — 1999
日本で初めての独立系ネット企業として上場
インターキューは企業向けにドメイン名取得代行を無料で提供する日本初のサービスを始め、ICANN(インターネットのドメイン名を管理する国際組織)からアジア圏および日本で唯一の商用ドメイン名登録機関に選ばれます。同じ年の夏、独立系ネットベンチャー・インターネットサービスプロバイダとして日本で初めて株式を店頭公開しました。証券コードは今も変わらない「9449」です。
2001 — 2005
「GMO」への改称と、グループ各社の相次ぐ上場
2001年、商号を「グローバルメディアオンライン(GMO)」に変更しました。2004年に東証第二部、2005年には東証第一部へと上場区分を引き上げます。同じ時期、決済事業を担う子会社(のちのGMOペイメントゲートウェイ)などグループ各社も相次いで株式を上場させ、1つのグループから複数の上場会社を生み出す経営スタイルが確立していきました。
2005 — 2007
オリエント信販の買収と、ローン事業からの撤退
2005年、無借金経営を続けていたGMOは、消費者金融のオリエント信販を約250億円で買収し、金融事業に参入しました。2006年、最高裁がグレーゾーン金利を違法と判断し、過払い金の返還請求が急増します。2007年12月期、GMOは純損失176億円を計上し、自己資本比率総資産のうち、返済不要の自己資本が占める割合を示す指標。は0.5%まで落ち込みました。同じ2007年の夏、GMOはローン・クレジット事業からの撤退を決めます。
2008 — 2017
決済事業を軸に業績を回復、暗号資産事業へ参入
ローン事業撤退後、GMOは祖業に近い決済・インフラ事業に経営資源を集中させました。2015年12月期には連結売上高1,263億円・営業利益148億円まで回復し、撤退から8年で売上規模を約2.5倍に伸ばしています。2017年には暗号資産交換事業を手がけるGMOコインが取引を開始し、金融事業の幅をさらに広げました。
2017 — 2020
個人情報流出と、コロナ下でのいち早い在宅勤務
2017年、決済子会社のGMOペイメントゲートウェイが不正アクセスを受け、約72万件のクレジットカード情報が流出した可能性が判明しました。原因はサイトで使っていたソフトウエアの脆弱性でした。2020年、新型コロナウイルスの感染拡大に備え、GMOは渋谷・大阪・福岡のオフィスに勤務する約4,000人を、決定の翌日には在宅勤務へ切り替えています。
2022 — 2025
純粋持株会社体制へ、GMOインターネットグループが発足
2022年、商号を現在の「GMOインターネットグループ株式会社」に改めました。2025年には、インターネットインフラ・広告メディア事業を吸収分割で子会社のGMOインターネット株式会社へ引き継がせ、純粋持株会社体制へ移行します。2025年12月期の連結業績は、売上高2,856億円・営業利益591億円(前年比+19.5%)で、売上高は15期連続の増収でした。
TEN YEARS

10年で、売上は約2.1倍

3,000億円
1,500億円
2016 · · · · · · · · 2025
売上 純利益(手元に残った利益) 赤字だった年
売上
10年前
1,350億円
現在
2,856億円
約2.1倍に増加
純利益
(手元に残った利益)
10年前
72億円
現在
161億円
売上100円につき約6円
従業員
10年前
4,471
現在
6,484
約1.5倍に増加
02

事業の構造 — 何で稼いでいるか

柱 01
インターネットインフラ事業(ドメイン・サーバー・決済)
「お名前.com」によるドメイン取得代行やレンタルサーバー、EC事業者向けの決済サービスなど、企業がネットで商売をするための土台を提供する事業です。1995年のインターネット事業参入以来、グループが最初に手がけてきた祖業に近い領域でもあります。
柱 02
インターネットセキュリティ事業
SSLサーバー証明書などの暗号化技術や、企業になりすました偽サイト・偽アカウントの監視・削除支援、サイバー攻撃対策までを提供する事業です。ネット上の「信頼」を守るインフラとして、他の事業を裏側から支えています。
柱 03
インターネット広告・メディア事業
自社が運営するメディアの広告枠と、広告配信技術(アドテクノロジー)を組み合わせ、企業の集客をワンストップで支援する事業です。
柱 04
インターネット金融事業(FX・証券・ネット銀行)
GMOクリック証券によるFX・株式取引と、GMOあおぞらネット銀行によるインターネット銀行サービスを展開しています。取引高で世界トップ規模のFX取引を展開し、2021年の実績で「ギネス世界記録」にも認定されました
柱 05
暗号資産事業
GMOコインを通じて、暗号資産(仮想通貨)の売買・交換サービスを提供する事業です。決済やセキュリティで培ったノウハウを、新しい金融インフラに応用しています。
03

投資指標

株価
——
東証プライム
前日比
——
——
配当利回り
——
年間予想
PER
——
株価収益率
PBR
——
株価純資産倍率
時価総額
——
円換算
52週高値
——
過去1年
52週安値
——
過去1年

取得中…

投資家の博士

投資家目線のポイント

GMOインターネットグループ(証券コード9449)のほかにも、GMOインターネット(4784)やGMOペイメントゲートウェイなど、複数のグループ会社が別々に上場しています。似た社名の会社が多いため、どの証券コードがどの会社を指すのかを確認してから情報を読む視点が役立ちそうです。

金融・暗号資産事業は、法改正や規制強化の影響を受けやすい分野です。過去にはローン事業で大きな損失を出した経緯もあり、新しい金融分野に参入するニュースに接したときは、それがどんな規制のもとで行われる事業かを見る視点が参考になりそうです。

「ダイヤルQ2」——熊谷正寿、音声サービスからインターネットへの転身

1991年、熊谷正寿さんは東京都世田谷区下馬で「株式会社ボイスメディア」を設立しました。最初の事業は、電話回線を使ったダイヤルQ2による音声情報サービスでした。

1995年、急速に広がり始めていたインターネットに着目した熊谷さんは、商号を「インターキュー株式会社」に改め、インターネット接続事業に本格参入します。同じ年に始めた接続サービス「interQ」は、開始から1か月半で全国51拠点まで拡大しました。電話の世界から出発した会社が、ここでネットの世界に軸足を移しています。

「55ヵ年計画」——2051年に売上高10兆円を掲げた宣言

上場前のGMO(当時インターキュー)は、2051年までに売上高10兆円・経常利益1兆円を目指す「55ヵ年計画」を策定しました。策定時点から半世紀以上先の目標です。

インターネット業界は変化が速く、数年先を見通すのも難しい業界です。それでもあえて55年という超長期の目標を置いたのは、短期的な数字の積み上げでなく、全社員が共有できる長い物差しを持たせるためでした。この計画は、その後もグループの合言葉として使われ続けています。

アジアで唯一のドメイン登録機関——ICANNが選んだ日本発ベンチャー

インターキューは企業向けに、ドメイン名取得代行を無料で提供する、日本初のサービスを始めました。ドメインという「ネット上の住所」を扱う事業への布石でした。

1999年、インターキューはICANNから、アジア圏および日本で唯一の商用ドメイン名登録機関に選ばれます。同じ年の夏、独立系ネットベンチャー・インターネットサービスプロバイダとして日本で初めて株式を店頭公開しました。ドメイン事業は、のちに「お名前.com」としてグループの土台の一つになっていきます。

400億円が消えた夜——オリエント信販、ローン事業の挫折と8年越しの立て直し

2005年、無借金経営を続けていたGMOは、消費者金融のオリエント信販を約250億円で買収し、金融事業に参入しました。ところが2006年、最高裁がグレーゾーン金利を違法と判断し、過払い金の返還請求が全国で急増します。会計基準の見直しも重なり、GMOは巨額の引当金を積む必要に迫られました。

2007年12月期、GMOは純損失176億円を計上し、自己資本比率は0.5%まで落ち込みます。同じ2007年の夏、熊谷正寿さんはローン・クレジット事業からの撤退を決断しました。買収や増資、貸付を合わせた総損失は約400億円に達したと伝えられ、熊谷さん個人も私財を投じて資金繰りを支えたと報じられています。オリエント信販は最終的に500万円程度で譲渡されたと報じられています。

撤退後、GMOは決済・インフラという祖業に近い事業に経営資源を集中させます。2015年12月期には連結売上高1,263億円・営業利益148億円まで回復し、撤退から8年で売上規模を約2.5倍に伸ばしました。この危機のあと、熊谷さんは投資額を自己資産の3分の1までにとどめるという社内の規律を定めたとされています。

72万件のカード情報流出——決済代行最大手を襲った不正アクセス

2017年、GMOグループの決済子会社であるGMOペイメントゲートウェイが運営を受託していた2つの支払いサイトが、外部からの不正アクセスを受けました。原因は、サイトで使っていたソフトウエア(Apache Struts2)の脆弱性でした。

調査の結果、セキュリティコードを含むクレジットカード情報、約72万件が流出した可能性があることがわかりました。影響を受けたのは、東京都税のクレジットカード支払いサイトと、住宅金融支援機構の保険料支払いサイトです。決済代行という個人情報を大量に預かる事業だからこそ、リスクの大きさが際立った事件でした。

4,000人を1日で切り替えた——新型コロナ、他社に先駆けた在宅勤務

2020年、国内で新型コロナウイルスの感染が広がり始めた早い段階で、GMOはいち早く在宅勤務体制への移行を決めました。決定の翌日には、渋谷・大阪・福岡のオフィスに勤務する約4,000人(国内従業員の9割)を在宅勤務に切り替えています

熊谷正寿さんは、この対応が可能だった理由として、平時からの事業継続計画(BCP)の準備と、1995年に定めた「スピリットベンチャー宣言」という社内の行動指針が浸透していたことを挙げています。「仕事の締め切りを決める場合、『今週中』ではなく『今週金曜日の午後6時』など、何時何分まで決めます」という普段からの習慣が、在宅勤務でもチームの動きを止めなかったと説明しました。

「ギネス世界記録」に認定——GMOクリック証券、FX取引高世界一への道

グループ会社のGMOクリック証券は、2006年にFX取引サービス「FXネオ」を始めました。業界最小水準のスプレッド(売値と買値の差=実質的な取引コスト)を掲げ、個人投資家の取引を集めていきます。

2023年、GMOクリック証券は、2021年の年間FX取引高について「店頭外国為替の最多取引額企業」として「ギネス世界記録」に認定されたと発表しました。サービス開始からおよそ15年をかけて積み上げた取引実績が、世界的な記録として認められた形です。

持株会社への転換——4度目の社名変更とGMOグループの新体制

GMOは、インターキュー(1995年)、グローバルメディアオンライン(2001年)、GMOインターネット(2005年)と、これまでに何度も社名を変えてきました。2022年、社名を現在の「GMOインターネットグループ株式会社」に改め、純粋持株会社化の方針を打ち出します。

2025年、GMOはインターネットインフラ・広告メディア事業を、吸収分割によって子会社のGMOインターネット株式会社へ引き継がせ、持株会社体制へ移行しました。かつて自ら育てた事業を、今度は子会社として送り出す番です。2025年12月期の連結業績は、売上高2,856億円・営業利益591億円(前年比+19.5%)で、売上高は15期連続の増収です。