東京スカイツリーや東京駅を手がけたゼネコン、大林組。 1892年、大阪の紙工場工事の落札から始まった。 談合事件で経営体制を刷新した過去を持ちながら、いまも日本の風景をつくり続けている。
創業から現在へ — ストーリー
事業の構造 — 何で稼いでいるか
投資指標
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投資家目線のポイント
建設業は受注してから売上に計上するまでに数年かかる特性があります。大林組の受注高は、数年後の売上や利益を映す先行指標として読む視点が参考になりそうです。
海外工事は、発注者との設計変更や契約解釈の違いから、想定外の損失につながるリスクがあります。ドバイメトロ工事のような事例は、海外比率が高い時期ほど業績が振れやすくなる可能性を示しています。
「阿部製紙所」——19歳の見習いが起業するまで
大林芳五郎は1864年に大阪で生まれ、11歳で呉服店に奉公に出ました。18歳で独立したものの、店はわずか半年で畳んでいます。
19歳のとき、芳五郎は土木建築請負業への転身を志し、請負業者のもとで修業を積みました。東京遷都にともなう皇居造営工事にも携わり、専門知識を身につけたとされています。1892年、阿部製紙所の工場新設工事の落札に成功し、大阪で「大林店」を開業しました。
東京駅を手がけ、全国区の請負業者になる
1904年、大林店は「大林組」に名前を改めました。転機は1911年です。辰野金吾が設計した東京中央停車場、のちの東京駅の建設を指名で受注しました。
この工事を完成させたことで、大林組は大阪の一地方業者から、全国に知られる請負業者へと地位を上げています。同じ年、大阪電気軌道からは当時の複線トンネルとして日本最長だった生駒隧道の工事も受け負いました。
「市民の寄付」で完成した大阪城天守閣
1928年、大阪市は昭和天皇の即位を記念して大阪城天守閣の再建を決めましたが、財政難で予算がありませんでした。市民からの寄付は目標の430万円に届かず、計画は行き詰まります。
ここで動いたのが、当時の大林組社長・大林義雄でした。「これは大阪市民全体の大事業」だとして、380万円という金額で工事を引き受ける契約を結んでいます。天守閣は1931年に完成し、鉄骨鉄筋コンクリート造の復興天守として、いまも大阪のシンボルであり続けています。
明石海峡大橋、世界最長のつり橋を支えた基礎
1998年に開通した明石海峡大橋は、全長3,911mの世界最長のつり橋でした(2022年にトルコの橋に抜かれるまで)。大林組を含むJVは、神戸側の橋台にあたる「1Aアンカレイジ」の工事を担当しています。
アンカレイジは、吊り橋のケーブルが引っ張る巨大な力を地盤に伝える構造物です。直径約85m、深さ約63.5mという巨大な空間をコンクリートで満たす工事でした。1995年の兵庫県南部地震で地盤がずれ、橋の全長が図らずも約1m伸びるという出来事もありました。
六本木ヒルズ森タワー、都心再開発の象徴
2003年、大林組は鹿島建設とのJVで六本木ヒルズ森タワーを完成させました。地下6階地上54階、高さ241mの超高層ビルです。
オフィス・商業施設・住宅・文化施設などを一体で整備する大規模な再開発構想を、施工の面から支えた工事でした。以後、大林組は都心の大型再開発案件を数多く手がけるようになっています。
東京スカイツリー、634mの建設中に起きた震災
2008年に着工した東京スカイツリーは、東京タワーの4分の1という狭い敷地に、高さ634mのタワーを建てる難工事でした。地下深部の杭打ちには「ハイブリッド地下工法」、中心の心柱には「スリップフォーム工法」を採用し、垂直精度を保ちながら工期を縮めています。
2011年、高さ625m付近までリフトアップ作業が進んでいたさなか、東日本大震災が発生しました。作業員にけがはなく、翌年、タワーは無事に竣工しています。建設に関わった人数は、のべ58万人にのぼりました。
「640億円」の赤字——ドバイメトロ工事でのつまずき
大林組は、ドバイの都市交通システム「ドバイメトロ」の建設に、5社コンソーシアムの一員として参画していました。ですが、発注者との設計変更や契約解釈の違いから工事原価が膨らみ、増額は認められませんでした。
2010年3月期、連結経常損益は640億円の赤字となり、1958年の上場以来はじめての赤字決算になっています。それでも大林組は工事をやり遂げ、2011年にはグリーンラインが開業しました。工事終了後は中東事務所を新設し、地域での事業を続けています。
リニア中央新幹線談合事件——経営体制の刷新
2017年、大林組はリニア中央新幹線の新駅工事をめぐり、独占禁止法違反の疑いで捜索を受けました。受注予定業者をあらかじめ決め、見積価格の内訳まで連絡し合っていたと認定されています。
2018年、大林組は社長を含む経営体制を一新しました。同年の判決で罰金2億円が科され、大林組は違反行為を自主申告しており、清水建設と合わせて約43億円の課徴金納付命令も出ています。2019年には第三者委員会の提言に沿って、同業者との接触ルールを厳しくするなどコンプライアンス体制を再構築しました。
熊本城の復旧、伝統技術と最新技術の融合
2016年の熊本地震で、熊本城の天守閣や石垣は大きく損壊しました。大林組は公募型プロポーザルで復旧整備事業の担当に選ばれています。
独自開発した免震・制震装置「クロスダンパー」や石垣補強技術「グリグリッド」を使い、伝統的な工法と最新技術を組み合わせて復旧工事を進めました。2021年、天守閣は地震前の姿を取り戻し、内部が一般公開されています。この工事は国土交通大臣表彰も受けました。
