段ボール箱のまま並ぶ棚と、驚くほど安い値段。「業務スーパー」を運営するのが神戸物産だ。 兵庫の小さな食品スーパーは、自分たちで工場を持つ発想で1,000店舗超の企業に育った。 安さの裏側にある、モノづくりの仕組みをのぞいてみよう。
創業から現在へ — ストーリー
10年で、売上は約2.3倍
(会社に残った利益。現金の増減とは異なります)
事業の構造 — 何で稼いでいるか
投資指標
取得中…
仕入れでは敵わない——製造小売という結論に至った
沼田昭二は兵庫県加古川市神野町石守で、個人商店として食品スーパー「フレッシュ石守」を開きました。当時はダイエーなど大手チェーンが全国展開を進めていた時期です。仕入れ価格でも店舗ブランドでも大手には勝てないとの見方から、流通の工夫ではなく、食品を自分たちで作ることを競争の軸に据えたと伝えられています。
自社で製造するというこの判断が、その後の神戸物産の骨格になっています。
大連に工場を建てた——地方スーパーの「異例」な賭け
フレッシュ石守は、中国遼寧省に自社工場・大連福来休食品有限公司を設立しました。地方の食品スーパーが海外に自前の工場を持つのは、当時の日本企業としては異例のことでした。
沼田は、現地生産から日本への輸入までを一社で担うウォルマートやマクドナルドなど欧米企業の仕組みに着目していたと伝えられています。商社や問屋を介さない直接調達により、業界平均より低い店頭価格を実現する土台が、ここでできました。
業務スーパー1号店——本部が卸し、加盟店が売った
フレッシュ石守は業務スーパー本部としてフランチャイズ(FC)体制を発足させ、兵庫県三木市に「業務スーパー」1号店を開きました。自社工場で作り、本部が卸し、加盟店が売るという製販一体の仕組みが、ここで形になっています。
自社で店舗を持つ直営方式ではなくFC方式を選んだことで、店舗投資の負担を抑えながら、全国展開のスピードを上げることができました。
大証二部に上場——卵からパンまで子会社にした
神戸物産は大阪証券取引所市場第二部に株式を上場しました。その後、卵や大豆食品、精肉、製粉、パンなど、食品メーカーを次々に子会社化しています。
売り方よりも、自分たちが売る商品そのものを深く知ることを優先するという考え方を実践し、プライベートブランド(PB)商品の比率を高めていきました。
「継がなくていい」——28歳で経営に加わった長男
沼田博和は京都薬科大学大学院を修了後、いったん大正製薬に就職しました。父の会社を継ぐことが決まっていたわけではなく、父からは「継がなくていい」と言われていたと語っています。
結婚を機に関西へ戻り、神戸物産に入社したのは28歳のときでした。入社初日から経営会議に加わり、父からの質問に答える形で経営を学んだと伝えられています。父の沼田昭二は2012年、社長の座を博和に譲りました。
本社に強制調査——153回のヒアリングが出した結論
証券取引等監視委員会が、インサイダー取引会社の内部情報を知る立場の人が、その情報が公表される前に株式を売買すること。法律で禁止されている。の疑いで神戸物産の本社を強制調査しました。同社が自社株買い企業が自社の発行済み株式を市場などで買い戻すこと。の実施を公表する前に、この情報を得た人物が株を売買した疑いが持たれたものです。
外部弁護士による調査では、延べ153回のヒアリングなどを経て、情報伝達行為を行った事実は確認できないという結論に至りました。ただし内部情報の管理体制には課題があったとして、神戸物産は情報隔離の徹底や内部通報制度の強化など、再発防止策を実施しています。
香港子会社の所得隠し——1億6000万円を追徴された
大阪国税局の税務調査で、神戸物産は3年間で約2億8000万円の所得隠しを指摘されました。税負担の低い香港子会社の所得を、国内所得と合算せずに申告していたことが問題視されたものです。
重加算税を含め約1億6000万円を追徴されています。
外食子会社の独立——翌年、焼肉坂井HDとして上場した
神戸物産は焼肉店やレストランなど外食事業に参入し、複数のブランドを傘下に持つまでに広げました。ですがクックイノベンチャー及びジー・コミュニケーショングループは、神戸物産グループを離れて自ら事業を拡大したいと考えるようになります。
神戸物産は子会社側のこの意向を受け入れ、外食関連11社の全株式を杉本英雄氏らへ譲渡しました。譲渡先のクックイノベンチャー(旧ジー・テイスト)は翌年、焼肉坂井ホールディングスとして東証スタンダード東京証券取引所の上場区分の一つ。2022年の市場再編で、上場企業はプライム・スタンダード・グロースの3区分に分けられた(それ以前は市場第一部・第二部やマザーズと呼ばれていた)。に株式上場を果たしています。
中国一極からの転換——ベトナムに現地法人を設立した
神戸物産は長年、中国の自社工場を海外生産の中心に据えてきました。2025年、ベトナムに現地法人を設立し、生産拠点を東南アジアへ広げ始めています。
人件費の上昇や地政学リスクの高まりに対応する動きです。中国工場から始まった自社製造・自社販売という発想は、調達先を分散させながら受け継がれています。
農薬が基準超え——冷凍ピーマン45,648個を回収した
神戸物産は、中国産の冷凍千切りピーマンから基準値を超える残留農薬(エトキサゾール)を検出したとして、45,648個を自主回収しました。同じころ、冷凍大根からも別の農薬(チアメトキサム)が基準値を超えて検出され、回収の対象になっています。
神戸物産は「健康被害の可能性は極めて低い」と説明しています。
回収を経てもなお——1,137店で最高益を更新した
それでも業務スーパーの成長は止まりませんでした。店舗数は1,137店に達し、ほとんどがフランチャイズ(FC)で運営されています。
同じころに発表された中間決算では売上高2,861億円で、中間期として3期連続の過去最高益を更新しました。
