石川県の小さな在宅介護会社は、2018年、既存施設の一角に特定の疾患だけに特化した専門フロアを開いた。 全国展開でグロースからプライムへ駆け上がった直後、診療報酬の不正請求が発覚する。 新体制のもとで、信頼の立て直しが試されている。

01

創業から現在へ — ストーリー

2006
デイサービス開業から、サンウェルズ誕生へ
苗代亮達が石川県で立ち上げた介護会社は、複数の関連会社を経て、2011年にサンウェルズとして生まれ変わった。
2011
石川県内での施設拡大から、専門フロアの開設へ
商号変更後も石川県内で施設拡大を続けた。2018年、事業を再編し、パーキンソン病に専門特化したフロアを新たに設けた。
2018
「PDハウス」の全国展開と東証グロース上場
パーキンソン病専門の「PDハウス」は開設後、福岡・北海道など全国に展開エリアを広げた。2022年、東京証券取引所グロース市場へ上場した。
2022
プライム市場への昇格と急拡大
上場後もPDハウスの新規開設は続き、2024年、東証プライム東京証券取引所の上場区分の一つ。2022年の市場再編で、上場企業はプライム・スタンダード・グロースの3区分に分けられた(それ以前は市場第一部・第二部やマザーズと呼ばれていた)。市場へ市場区分を変更した。同じ年、転換点を迎えた。
2024
診療報酬28億円超の不正請求が発覚
一部の報道機関が訪問看護の診療報酬の不正請求を報じた。5か月後、特別調査委員会の調査でほぼ全施設に総額約28億4700万円の不正請求が認定され、決算を訂正した。
2025
東証の審査と経営体制の刷新
上場維持を巡る審査が続くなか、経営体制も刷新された。2026年、苗代亮達に代わり新俊彦が新社長に就任した。
TEN YEARS

9年で、売上は約11.2倍

300億円
150億円
2017 · · · · · · · 2025
売上 純利益(会社に残った利益)
売上
9年前
25億円
↓
現在
281億円
約11.2倍に増加
従業員
9年前
324人
↓
現在
3,570人
約11.0倍に増加
02

事業の構造 — 何で稼いでいるか

柱 01
PDハウス事業
パーキンソン病に特化した住宅型有料老人ホームを全国展開しています。
柱 02
医療特化型住宅事業
医療的ケアが必要な方向けの住宅型サービス。PDハウスと同じ基盤で展開します。
柱 03
北陸の介護サービス
石川県中心にデイ・居宅介護を展開する祖業。地域密着の総合介護サービスです。
柱 04
福祉用具・加圧
福祉用具のレンタル・販売と加圧トレーニングを北陸で展開する介護保険外事業です。
03

投資指標

株価
——
東証プライム
前日比
——
——
配当利回り
——
年間予想
PER
——
株価収益率
PBR
——
株価純資産倍率
時価総額
——
円換算
52週高値
——
過去1年
52週安値
——
過去1年

取得中…

病気を選ばない介護施設で——2018年、一つの病に絞った

介護施設は本来、特定の病気の人だけを選ばない場所です。ところが2018年、苗代亮達は自らの会社の施設を一つの病気だけに絞り込みました。

苗代亮達は石川県で通所介護サービスの会社を創業しました。複数の関連会社を設立・合併しながら地域に根ざした施設を次々と開き、2011年、株式会社サンウェルズに商号変更しています。

その後も歩みを止めず、福祉用具事業の「株式会社アイテム」と加圧トレーニング事業の「株式会社SUN加圧スタジオ」を吸収合併する一方、既存施設の一角に単一疾患専門のフロア「リライフ白山」を開設しました。これが、全国に類を見ない、一つの疾患だけに特化した介護施設の始まりです。

世界になかった専門施設——専門医と作ったケアの中身

PDハウスの柱は、脳神経内科の専門医による訪問診療と、24時間体制の訪問看護です。理学療法士や作業療法士、言語聴覚士がパーキンソン病に特化したリハビリを行い、症状の進行に合わせたケアを提供します。

スタッフには社内資格「PDライセンス」の取得を求め、専門医監修の研修や大学病院との連携を通じて知識を深めています。こうした全国の大学病院や専門医との連携は、同社が強みとして掲げる仕組みになりました。

福岡・北海道へ——矢継ぎ早に施設を開いていった

新施設の開設は、間を置かずに続きました。2019年に福岡、その翌年には北海道へ進出しています。そのうち2021年の一年間だけで、新たに7つの施設が開業しています。

こうした急拡大のペースが、のちに大きな代償を伴うことになります。

同行していない看護師——記録は「同行」と記されていた

2024年、順風だったはずのサンウェルズに、診療報酬を巡る疑惑の目が向けられます。サンウェルズは当初、「そのような事実は一切ない」と否定しました。

ですが同社は、外部の専門家からなる特別調査委員会の設置を発表し、疑惑の全容解明に乗り出します。2025年にまとまった調査報告書が明らかにしたのは、単純な事実でした。実際には同行していない、あるいは実質的な看護加算に値する行為がない訪問についても、複数名で訪問したとして加算を請求していたのです。

背景には、複数人での訪問を前提にした各施設の売上目標があったといいます。調査の結果、不正請求の総額は約28億4700万円にのぼり、サンウェルズはこの年の業績予想を、大幅な赤字に下方修正しました。

違約金6,240万円——東証との約束は破られていた

東京証券取引所は、プライム市場への市場変更時にサンウェルズが提出した宣誓書に違反があったと判断しました。2025年、同社は再審査の猶予期間に入り、上場契約違約金6,240万円を求められています。

サンウェルズは流通株式時価総額株価に発行済み株式数をかけた金額。企業の大きさを市場の評価額で示す数値。の基準も満たせず、スタンダード市場への変更を申請しました。しかし2026年、猶予期間の期限までに基準への適合が確認できず、東京証券取引所は監理銘柄(審査中)の指定理由を追加しています。

創業社長が去った後——厚生労働省出身の新社長

不正請求問題への対応が続くさなか、サンウェルズはもう一つの問題に直面します。苗代亮達社長が、会社の運転代行サービスを私的な用途に使っていたことが発覚したのです。その私的利用の金額は約1,600万円にのぼりました。

苗代は後任が決まり次第、社長を退任する意向を示しました。2026年、厚生労働省出身の社外取締役だった新俊彦が新社長に就任し、苗代は取締役に退いています。

新社長は就任にあたり、コンプライアンスや記録・請求管理、ガバナンス体制の強化に取り組む方針を示し、創業以来の理念「自らが輝き、人を元気にする」の承継を掲げました。厚生労働省で長年、介護制度を含む社会保障行政に携わった経験を生かし、透明性の高い経営を進めるとしています。PDハウスの入居者と現場のケアは、各地で続いています。